2023 年 14 巻 6 号 p. 931-937
はじめに:腰部脊柱管狭窄症(LSS)に対して神経障害性疼痛治療薬が登場し10年余りが経過した.上記治療薬が使用可能となる前後の保存治療の効果を比較した.
対象と方法:診療録より6ヶ月以上情報収集が可能であったLSS 533例を対象とした.2008年から1.5年の上記治療薬使用前の症例264例をA群,2019年から2.75年の上記治療薬が使用可能な症例269例をP群とした.診療ガイドラインの診断基準に準じ,臀部下肢痛,下肢のしびれ,間欠跛行等の症状があり,SLRは陰性で,MRIで脊柱管狭窄を認めた症例をLSSと診断した.症状の推移を改善,不変,悪化,不明と手術に分類した.
結果:使用薬は,PGE1製剤がA群55.3%,P群54.9%,NSAIDsはA群45.5%,P群50.2%と両群で差はなかった.P群で抗てんかん薬が63.1%,弱オピオイド19.5%,デュロキセチンが8.5%に使用された.症状はA群:改善54.2%,不変28.8%,悪化2.8%,手術12.9%.P群:改善46.1%,不変23.2%,悪化3.3%,手術26.2%で手術が有意に増加したが,1年間の手術数に換算すると両群で差はなかった.P群において抗てんかん薬の使用の有無で手術の割合に差はなかった.
結語:神経障害性疼痛治療薬の登場後も手術の割合は減少せず,重症例には限界があった.