2023 年 14 巻 9 号 p. 1184-1191
はじめに:腰部脊柱管狭窄症における黄色靱帯の肥厚の発生機序については解明されていない.我々はMRIから本靱帯肥厚を臨床的に定義し,遺伝子レベルでインスリンレセプターシグナルの関与を示した.本研究では黄色靱帯肥厚におけるリスク因子としての内因性インスリンの関与を検討した.
対象と方法:加療を行った腰部脊柱管狭窄症1,119例(平均76.1歳)を対象に,Sakaiの基準に従い黄色靱帯肥厚を定義し,インスリン抵抗性(HOMA-IR)を含めたロジスティック回帰分析で靱帯肥厚に関するリスク因子を検討した.
結果:黄色靱帯肥厚は51%に認め,年齢が有意に高く,男性,糖尿病の割合が多く,BMI,HOMA-IRが高値であった.体組成および画像所見では骨格筋量,腰椎前弯,仙骨傾斜,SVAが有意に高値であった.年齢と性別を補正した共分散分析では靱帯肥厚でHOMA-IRが有意に高値であり,ロジスティック回帰分析で有意な因子として認められた.
結語:黄色靱帯肥厚を伴う腰部脊柱管狭窄症ではインスリン抵抗性が高く,メカニカルストレス以外の要素として炎症や老化などが影響している可能性が示唆された.