Journal of Spine Research
Online ISSN : 2435-1563
Print ISSN : 1884-7137
14 巻, 9 号
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Editorial
原著
  • 酒井 義人, 若尾 典充, 松井 寛樹, 長田 直祥, 渡邉 剛, 渡辺 研
    2023 年 14 巻 9 号 p. 1184-1191
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰部脊柱管狭窄症における黄色靱帯の肥厚の発生機序については解明されていない.我々はMRIから本靱帯肥厚を臨床的に定義し,遺伝子レベルでインスリンレセプターシグナルの関与を示した.本研究では黄色靱帯肥厚におけるリスク因子としての内因性インスリンの関与を検討した.

    対象と方法:加療を行った腰部脊柱管狭窄症1,119例(平均76.1歳)を対象に,Sakaiの基準に従い黄色靱帯肥厚を定義し,インスリン抵抗性(HOMA-IR)を含めたロジスティック回帰分析で靱帯肥厚に関するリスク因子を検討した.

    結果:黄色靱帯肥厚は51%に認め,年齢が有意に高く,男性,糖尿病の割合が多く,BMI,HOMA-IRが高値であった.体組成および画像所見では骨格筋量,腰椎前弯,仙骨傾斜,SVAが有意に高値であった.年齢と性別を補正した共分散分析では靱帯肥厚でHOMA-IRが有意に高値であり,ロジスティック回帰分析で有意な因子として認められた.

    結語:黄色靱帯肥厚を伴う腰部脊柱管狭窄症ではインスリン抵抗性が高く,メカニカルストレス以外の要素として炎症や老化などが影響している可能性が示唆された.

  • 山田 実, 伊藤 不二夫, 伊藤 全哉, 柴山 元英, 中村 周, 吉松 弘喜, 星 尚人, 倉石 慶太, 三浦 恭志
    2023 年 14 巻 9 号 p. 1192-1196
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎後方手術既往のある椎間板ヘルニアに対し後方アプローチによる再手術は癒着や瘢痕組織に阻まれ硬膜神経根損傷のリスクが高まる.

    対象と方法:当該高位に手術既往のあった腰椎椎間板ヘルニアを対象とし,同一術者がFELD TF法(Full endoscopic lumbar discectomy transforaminal approach)を施行し,後ろ向きに臨床成績を評価した.

    結果:同一術者がFELD TF法を行った内,当該高位に手術既往のあった症例は34例.術後症状は有意に改善した(JOABPEQ:JOA Back Pain Evaluation Questionnaire,VAS:Visual Analog Scale,JOAスコア:日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準,Macnab).FELD TF法は,椎間孔からアプローチする事で骨切除をほぼ行うことなく硬膜外腔癒着組織を避けて椎間板ヘルニアに直接到達し椎間板ヘルニアを切除する事が可能であった.

    結語:FELD TF法は手術既往のある椎間板ヘルニアに対する手術療法として有用な選択肢となり得る.

  • 澤上 公彦, 渡辺 慶, 長谷川 和宏, 山本 智章, 島倉 剛俊, 大橋 正幸, 庄司 寛和, 溝内 龍樹, 田中 裕貴, 瀬川 博之, ...
    2023 年 14 巻 9 号 p. 1197-1203
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:テリパラチド(TPTD)はその強力な骨形成促進作用ゆえに,脊椎手術における骨粗鬆症関連合併症の予防目的に補助療法として期待されている.今回,脊椎手術患者における腸骨皮質骨の動態評価を行い投与期間の影響を検討した.

    対象と方法:骨粗鬆症を伴う脊椎固定術患者で骨生検に同意した39例(TPTD群32例,非投与(NTC群)9例)を対象とした.TPTDの投与期間は1ヶ月(6例),2ヶ月(7例),3ヶ月(7例),4ヶ月(6例),6ヶ月(6例)であった.全例,術前にテトラサイクリン内服による2回標識を施行.脊椎後方手術時に腸骨生検を行い,非脱灰薄切標本を作製した.骨形態計測法にて皮質骨における骨形成パラメーター骨石灰化面(MS/BS)を算出,TPTD投与期間別に分類しNTC群と比較した.

    結果:骨内膜MS/BSはTPTD投与開始後3ヶ月でピークを迎えNTC群の2.3倍に達した.骨膜MS/BSは6ヶ月で有意な増加かつ最高値に達した(p=0.0446).

    結語:力学的強度において重要となる皮質骨に対する骨形成を増大させるには6ヶ月以上かつ24ヶ月までのTPTD継続投与が有利である.

  • 吉岡 淳思, 近藤 幹大, 田中 健一郎, 蜂谷 裕道
    2023 年 14 巻 9 号 p. 1204-1212
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎椎間板ヘルニアに対するコンドリアーゼ椎間板内酵素注入療法の治療効果について検討した.

    対象と方法:2018年8月から2021年9月にかけて腰椎椎間板ヘルニアに対してコンドリアーゼ注入療法を行った100例を対象とした.男性76例,女性24例,平均年齢は36.3歳(15歳~62歳).VAS score(腰痛,下肢痛,下肢しびれ),合併症,手術移行例,再発例に加えて,X線画像,MRIを調査した.

    結果:各VASスコアは投与後3週の時点で改善を認め,投与3ヶ月以降は有意に改善し,最終観察時まで維持できていた.合併症は,皮疹を3例に認め,発熱と投与時の一過性の臀部痛,下肢痛の増悪を1例で認めた.コンドリアーゼの効果が得られず手術に移行したものは8例,投与後の再発は2例で認めた.X線画像での椎間板高については投与後3週時点で有意な低下を認めたが,それ以降は低下傾向ではあるものの有意な低下は認めなかった.MRIでは58例でヘルニア塊の縮小を認めた.

    結語:コンドリアーゼ治療の効果について自験例100例を報告した.重篤な合併症はなく良好な治療効果が得られていた.

  • 岩田 栄一朗, 山本 雄介, 定 拓矢, 川崎 佐智子, 奥田 哲教, 重松 英樹, 田中 康仁
    2023 年 14 巻 9 号 p. 1213-1218
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:感染性脊椎炎の診断における針生検術は,原因菌の同定のために細菌培養検査に提出する.ただし,培養できないことも多く,病理組織検査にも提出することにより診断能が向上する可能性がある.本研究の目的は,感染性脊椎炎における針生検術の細菌培養検査,病理組織検査,また両検査を組み合わせた場合の診断能について比較検討することである.

    対象と方法:感染性脊椎炎を疑い,針生検術を行った41例を後ろ向きに調査した.細菌培養検査,病理組織検査,両検査の組み合わせの感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率,正診率を算出した.

    結果:細菌培養検査,病理組織検査,両検査の組み合わせの感度,特異度,陽性的中率,陰性的中率,正診率はそれぞれ,(58%,90%,95%,41%,66%)(p=0.008),(74%,100%,100%,56%,81%)(p<0.001),(90%,90%,97%,75%,90%)(p<0.001)であった.また,感染群において細菌培養検査で陰性であった症例13例のうち,病理組織検査で陽性であった症例は,10例(77%)であった.

    結語:感染性脊椎炎における針生検術では,細菌培養検査だけでなく,病理組織検査も必ず行うことにより診断遅延の防止につながる.

  • 波多野 克, 圓尾 圭史, 西尾 祥史, 中村 佳照, 中村 吉宏, 橘 俊哉
    2023 年 14 巻 9 号 p. 1219-1224
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:3D-printed titanium alloy(PTA)ケージとtitanium-coated PEEK(TCP)ケージを使用した腰椎椎体間固定術の成績を後ろ向きに比較検討した.

    対象と方法:2015年10月から2020年7月の腰椎椎体間固定術を施行し1年以上経過観察できた97症例121椎間を後ろ向きに検討した.患者背景因子,手術関連因子,画像評価としては術後3ヶ月でのendplate cyst,スクリューの緩み,ケージ沈下,trabecular bone remodeling(TBR),術後1年での骨癒合の有無を検討項目とした.

    結果:endplate cystはPTA群で有意に少なく(p=0.01),TBRはPTA群で有意に多かった(p=0.03).骨癒合率は有意差を認めず(p=0.83),スクリューの緩み,ケージ沈下においても2群間に有意差を認めなかった(p=0.83,0.61).

    結語:endplate cystとTRBの結果からPTAケージは初期固定性において有利である可能性が示唆された.

  • 野村 裕, 野村 茂治
    2023 年 14 巻 9 号 p. 1225-1233
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:新鮮骨粗鬆性椎体骨折を伴う骨粗鬆症患者に対するロモソズマブの治療成績を報告する.

    対象と方法:椎体骨折を契機にロモソズマブを用い,12ヶ月以上経過観察可能であった60例を対象とした.骨癒合は臥位と座位のレントゲン側面像における骨折椎体傾斜角の差およびintervertebral cleft signを用いて評価した.骨折椎体の治癒過程における経時的骨硬化が骨密度増加をきたすため,腰椎骨密度は骨折椎体以外の椎体を用いて解析を行った.腰痛はvisual analog scale(VAS)を用いて,日常生活動作はRoland-Morris Disability Questionnaire(RDQ)を用いて評価した.

    結果:治療開始2,3ヶ月後の椎体傾斜角の差は全例5°未満であった.12ヶ月後の骨癒合率は約96.3%であった.腰椎骨密度増加率は6ヶ月後が11.7%,12ヶ月後が17.4%であった.12ヶ月後の大腿骨骨密度増加率は2.1%であった.VAS,RDQともに投与1ヶ月後から有意に低下した.

    結語:新鮮椎体骨折へのロモソズマブ投与は骨密度を有意に増加させ有用であった.

  • 玉置 康之, 室谷 和弘
    2023 年 14 巻 9 号 p. 1234-1238
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:本研究の目的は,保存治療に抵抗する急性型化膿性脊椎炎の予測因子を検討した.

    対象と方法:対象は急性型化膿性脊椎炎に対し保存治療を行った76例である.男性49例,女性27例,年齢は平均74歳,観察期間は平均198日であった.以上の症例のうち保存治療に抵抗した30例をR群,抵抗しなかった46例をNR群とし比較検討した.

    結果:年齢,性別,医療機関受診から診断までの期間,易感染性宿主,MRIの感染進展症例,耐性菌には有意差はなかった.R群とNR群の罹患椎体数は有意差を認めた.体温は有意差を認めなかった.WBCは初診時WBCに有意差を認めた.CRPは治療1週/2週/3週/4週CRPに有意差を認めた.多重ロジスティック回帰分析では,4週のCRPのみに有意差を認め,カットオフ値はCRP 2.0 mg/dlであった.

    結語:保存治療に抵抗する急性型化膿性脊椎炎は,治療4週のCRPで予測可能であり,カットオフ値はCRP 2.0 mg/dlであった.

  • 富永 冬樹, 森 英治, 碇 博哉, 吉本 隆昌
    2023 年 14 巻 9 号 p. 1239-1245
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:腰椎椎間板ヘルニアに対する新しい低侵襲な治療法であるコンドリアーゼ椎間板内注入療法の短期成績を調査し,予後予測因子を検討したので報告する.

    対象と方法:コンドリアーゼ注入療法を行い3ヶ月以上経過観察できた69例(男性48例,女性21例)を対象とした.平均年齢は45.0歳(17~89歳)であり,注入前のtension sign陽性は55例(79.7%)であった.調査項目は注入前と注入1ヶ月後・3ヶ月後の腰痛・下肢痛・下肢しびれVASの推移を調べた.

    結果:VAS値は平均で腰痛は注入前5.1が3ヶ月後2.8に,下肢痛は注入前6.9が2.4に,下肢しびれは6.0が3.2にいずれも有意に改善した(t検定,p<0.0001).下肢痛VASが50%以上改善した症例を有効群と定義すると注入後1ヶ月では36例(52%),3ヶ月では52例(75%)が有効であった.注入後3ヶ月での有効群と無効群で比較検討すると,有効群では年齢が若く(40.9±15.1歳vs 57.5±16.8歳,p=0.0011),tension sign陽性例が多かった(86.5% vs 58.8%,p=0.014).また有効群で注入後1ヶ月での下肢痛VASが有意に低下していた(-4.5±2.7 vs -0.2±2.1,p<0.0001).

    結語:若年者や投与前のtension sign陽性の症例,注入後1ヶ月での下肢痛VASが改善している例で投与後3ヶ月に効果を期待できる結果であった.

  • 西 亮介, 真鍋 和, 角田 大介, 柘植 和郎, 釜谷 邦夫
    2023 年 14 巻 9 号 p. 1246-1251
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:(a)術前の身体機能と(b)術前の患者立脚型評価法,(c)手術情報および(d)基本情報を説明変数として腰椎術後の在院日数の因子を明らかにすることを目的とした.

    対象と方法:2020年4月からの1年間で腰椎の手術を行った115名(男48名,女67名,平均年齢63.4±17.4歳,除圧術46例,固定術69例)を対象とした.評価内容は(a)6分間歩行試験,MMT.(b)RDQ.(c)固定術の有無.(d)BMI,性別,年齢,退院時の歩行様式を獲得した術後からの日数(以下,歩行獲得日数)とした.統計解析には腰椎術後の在院日数を目的変数として重回帰分析を用い,有意水準5%とした.

    結果:在院日数の有意な関連因子として,歩行獲得日数,固定術の有無,年齢,股関節伸展MMTが抽出された.

    結語:最終歩行獲得までの期間が長く,固定術施行,高齢,股関節伸展筋力低下によって在院日数がより長くなることが明らかになった.

  • 井上 大典, 重松 英樹, 松森 裕昭, 植田 百合人, 森田 稔也, 川崎 佐智子, 須賀 佑磨, 池尻 正樹, 田中 康仁
    2023 年 14 巻 9 号 p. 1252-1259
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:我々は腰椎椎体間固定術においてHigh-angle cageとPosterior Column Osteotomyを併用し(PLIF with HAP),局所alignmentの矯正と骨癒合に重点をおいている.今回当院でのPLIF with HAPの術後成績を報告する.

    対象と方法:2020年4月~2021年11月までの間に当院でPLIF with HAPをした70例について検討した.手術はtotal facetectomyを行い,12°のtitanium cageを使用した.経皮的椎弓根screwを挿入し,全例にCompressionをかけた.検討項目は手術時間,出血量,術前の腰椎骨密度,腰椎側面Xpにおいて,術前/術後/術後6ヶ月のすべり長(%slip),局所前弯角(Segment Lumbar Lordosis;SLL),平均椎間板高/椎体高比,後方椎間板高/椎体高比,術前/術後6ヶ月のJOA score,腰痛VAS,Computed Tomography(CT)での術後半年時点での骨癒合率,術後合併症とした.

    結果:%slip,SLLは術前/術後,術前/術後6ヶ月で,JOA,腰痛VASは術前/術後6ヶ月で有意差を認めた.骨癒合率は術後6ヶ月で92.9%であった.合併症は一過性の神経痛が1例であった.

    結語:PLIF with HAPは局所alignmentの矯正,骨癒合は良好であった.

症例報告
  • 岡村 祐太朗, 瀬上 和之, 高橋 秀, 矢倉 一道, 神﨑 浩二
    2023 年 14 巻 9 号 p. 1260-1265
    発行日: 2023/09/20
    公開日: 2023/09/20
    ジャーナル フリー

    はじめに:進行した強直性脊椎炎(Ankylosing Spondylitis,以下AS)患者に破壊性病変が生じることはあまり知られていない.破壊性病変はinflammatory lesionsとtraumatic lesionsに分類される.今回われわれはAS患者の頚胸椎移行部に生じた破壊性病変(traumatic lesions)が原因で下肢不全麻痺を生じた1例を経験したので報告する.

    症例:68歳,女性.ASとそれに伴う骨粗鬆症のため通院中であったが,3ヶ月前から徐々に下肢脱力の進行を認めるようになった.CTおよびMRI検査ではT2/3高位に椎体から椎弓,椎間関節に及ぶ骨破壊を伴った偽関節様の所見を認めた.破壊性病変部での不安定性が脊髄障害の原因と考え手術の方針とした.手術はASにおける優れた骨癒合能を考慮して偽関節様部に対する掻爬や骨移植はせずに後側方固定術をおこなった.術後下肢の麻痺は改善し,偽関節様部の骨癒合を認めた.

    結語:traumatic lesionsに対しては手術が必要とされるが,ASの骨形成能を考慮すると前方固定なしの後方固定術は有効な手術法の1つと考えられた.

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