はじめに:頚椎症性脊髄症(CSM)において,後方除圧術後の頚椎前弯減少・後弯化は治療成績の低下につながる.K-lineと前方骨性要素の距離(K-line brace height[KLBH])は脊髄前方圧迫因子を動的にも定量評価できる指標である.当院の手術症例を後ろ向きに追跡調査し,KLBH(単位mm)を屈曲位,中間位の順にA群(≧4,≧4),B群(<4,≧4),C群(<4,0<かつ<4)に分けて後方除圧術の治療効果や画像上の形態変化を比較検討した.
対象と方法:選択基準をCSM,40歳以上,術前中間位K-line(+),後方除圧術,術後1年以上追跡可能な症例とした.臨床成績やKLBH,局所後弯角など評価できた症例は33例あり,A群13例,B群14例,C群6例に分けて比較した.
結果:臨床成績はC群で有意に低かった.術後中間位KLBHはA,B,C群の順に大きく,中間位K-lineが陰転化した症例が2例あった(全てC群).局所後弯角≧10°を有する例はA群で有意に少なかった.
結語:CSMの後方除圧術では,中間位K-line陰転化のリスクを考慮すると,術前中間位KLBHの安全域は4 mm以上であることが示された.
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