2025 年 16 巻 5 号 p. 763-767
はじめに:徒手筋力テスト(MMT)は筋力評価に広く用いられているが,L4神経根障害を伴う腰椎疾患では大腿四頭筋筋力がMMT5でも膝崩れを自覚し日常生活に支障を来す症例があり,手術適応を検討する際に筋力低下をMMTのみで判断することの正確性に疑問を感じることがある.本研究では問診による自覚症状の評価と,MMTと徒手筋力測定器による膝伸展筋力を用いた大腿四頭筋の筋力評価の比較を行い,MMTによる筋力評価の正確性を検討した.
対象と方法:2023年7月から9月までの間に腰椎疾患で手術を予定した233例のうち,取り込み基準を満たした82例を対象とした.問診にてG群(膝崩れあり)とC群(膝崩れなし)に分類し,両群とも術前に膝伸展筋力を測定し健患比を計算した.
結果:82例中G群は16例,C群は66例であった.膝伸展筋力の健患比はG群では77.8%,C群では90.7%と膝伸展筋力はG群で左右差が大きくみられた.
結論:大腿四頭筋はMMT5でも約20%の患者が膝崩れを自覚し,膝伸展筋力の左右差を認めた.大腿四頭筋のMMT評価は正確性を欠く可能性が示唆された.