Palliative Care Research
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症例報告
パロキセチンが肝臓がんによる黄疸の掻痒感に有効であった1例
新城 拓也岡田 雅邦
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キーワード: 掻痒感, パロキセチン, 黄疸
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2006 年 1 巻 2 号 p. 317-320

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抄録

【目的】悪性腫瘍に合併する掻痒感は頻度が低く, 機序の解明や治療についての知見はまだ不十分である. 近年, 全身疾患に伴う掻痒感に対する, パロキセチンの有効性が報告されており我々も同様の症例を経験したため報告する. 【症例】72歳, 男性. 肝細胞がんの患者が黄疸のために入院した. 経過中掻痒感が出現し, 抗ヒスタミン剤とステロイド外用剤を投与したが, 全く掻痒感の改善がみられなかった. そこで, パロキセチン10mgを経口投与したところ, 翌朝には掻痒感が完全に消失し, その効果は死亡までの2週間持続した. 【結論】パロキセチンが抗掻痒作用を発揮する機序として, 末梢神経から中枢神経に掻痒感を伝達するセロトニン作動性の神経伝達を変化させることと, 掻痒感の発生物質である内因性のオピオイドを活性化する酵素(CYP2D6)を阻害する働きの関与が推測されている. 悪性腫瘍による黄疸にパロキセチンが有効であった1例を報告した.

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© 2006 日本緩和医療学会
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