Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
症例報告
末期癌患者の反回神経麻痺に対する経皮的声帯内シリコン注入療法
福重 哲志梅野 博仁山田 信一津田 勝哉加納 龍彦
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2006 年 1 巻 2 号 p. 321-324

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抄録

反回神経麻痺は末期がん患者にしばしば認められる症状である. 反回神経麻痺に伴う嗄声は患者のコミュニケーション能力を低下させる. 誤嚥は患者から食事の楽しみを奪うとともに, 有効な咳ができなくなることとあわせて, 肺炎の原因ともなる. 反回神経麻痺による症状コントールの必要性は明らかであるが, 末期がん患者における有用な治療法はほとんどないと思われる. 今回, 緩和ケア病棟入院中の末期がん患者3例の反回神経麻痺に対して, 局所麻酔下に経皮的声帯内シリコン注入療法を行う機会を得た. シリコン注入は声帯をファイバースコープで観察しながら, 経輪状甲状間膜法で行った. シリコン注入量はファイバースコープの所見から決定し, 0.4から2.0mlのシリコンを注入した. その結果, 3例とも嗄声, 嚥下機能の改善を認め, 生活の質の改善が得られた. 術中術後ともに, この方法による合併症は認めなかった. 経皮的声帯内シリコン注入療法は末期がん患者の反回神経麻痺の治療法として有用である.

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© 2006 日本緩和医療学会
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