抄録
フェンタニル口腔粘膜吸収剤(transmucosal immediate-release fentanyl;以下,TIRF)は突出痛への有効性が期待されるが,不適切な使用による有害事象も懸念されるため,適正使用モニタリングが重要である.当院でTIRFが処方された31例を対象に,TIRF使用の適切性,逸脱の原因,有害事象を評価するために後方視的カルテ調査を実施した.評価のため,持続痛のコントロール,他のオピオイドの使用状況からなる2段階のアルゴリズムを作成した.TIRF使用が適切と判断された症例は6例(19.4%)であった.不適切な症例では,突出痛の評価が不十分で,定時オピオイド鎮痛薬と同一成分という理由のみで処方された症例が19例,他のオピオイドがより適切である症例が12例であった.全例でTIRFが最小用量から開始され,重篤な有害事象はなかった.突出痛の十分な評価に基づく適切な薬剤選択が望まれる.