2018 年 13 巻 1 号 p. 77-81
【緒言】終末期肺がん患者に,稀な気腫性膀胱炎を認めた1例を経験した.【症例】72歳男性.肺がん,骨転移で治療中,がん性髄膜炎と診断され抗がん剤治療終了の方針となり,当院緩和ケア病棟へ転院となった.進行性の意識障害,両下肢麻痺を認め,画像検査で,がん性髄膜炎に伴う髄腔内結節および膀胱壁内気腫像を認めた.気腫性膀胱炎と診断し,膀胱内洗浄ドレナージと抗菌薬治療を行った.膀胱壁内気腫像は改善したが,がん性髄膜炎の進行により転院10日目に死亡した.【考察】気腫性膀胱炎は,悪性腫瘍などの基礎疾患を有する患者に合併しやすい.本症例でも担がん状態に加えて,ステロイド使用歴,がん性髄膜炎による膀胱直腸障害など,リスク要因を多く認めた.終末期がん患者では,ステロイド使用や,中枢神経転移や,排尿障害などを認めることが多く,発症リスクは高い.時に致命的な可能性もあり,がん終末期において注意すべき病態である.