2018 年 13 巻 2 号 p. 163-167
余命が限られているがん患者にとっては,終末期を過ごす療養の場所を適切に選択することは極めて重要である.地域の緩和ケアに関わっている医療スタッフとの連携を深めるために,東名古屋在宅医療懇話会を組織し,緩和ケア情報共有ツールを作成した.緩和ケア情報シートを用いて当院から紹介した35例のうち,25例が慢性期病院に転院し,10例は在宅医療を受けた.死亡場所の内訳は,緩和ケア病棟が23人,自宅が6人,当院が4人であった.紹介先スタッフを対象とした質問紙を用いた調査を行ったところ,緩和ケア情報共有ツールの導入は,患者の予後や患者・家族の病識と説明内容に対する理解度合い,医療や予後に対する考えに関する情報を得ることに繋がり,緩和医療の質向上に有用であることが示された.本活動は,シームレスな緩和ケアの実現に貢献し,地域の医療スタッフが責任を分担して最適な緩和ケアを提供することを促進すると考えられた.