Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
13 巻, 2 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
原著
  • 高林 広明, 河原 正典, 橋本 孝太郎, 佐藤 一樹, 鈴木 雅夫
    2018 年 13 巻 2 号 p. 129-138
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/18
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    【目的】高齢がん患者に対する在宅緩和ケアの年齢別の特徴を明らかにすること.【方法】2013年6〜11月に訪問診療を受けたがん患者1,032名を対象に後方視的カルテ調査を実施した.非高齢者群(65歳未満),前期高齢者群(65〜74歳),後期高齢者群(75〜84歳),超高齢者群(85歳以上)に分け,患者背景,患者・家族の問題,転帰,受けた医療行為や公的サービスについて比較検討した.【結果】介護者不在の割合が超高齢者群では18%と高く(p=0.014),介護の負担に関する問題は後期高齢者群,超高齢者群で多かった(それぞれ,32%,33%,p=0.002).訪問看護や訪問介護の利用は後期高齢者群(それぞれ,86%,30%),超高齢者群(それぞれ,89%,35%)で多かった(それぞれ,p=0.003,p=0.003).【結論】後期高齢者,超高齢者では介護面で問題を有し,訪問看護・訪問介護の利用が多かった.

  • 武富 由美子, 田渕 康子, 熊谷 有記, 坂本 麻衣子, 牧原 りつ子
    2018 年 13 巻 2 号 p. 139-145
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/18
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    【目的】一般病棟のがん患者遺族の心的外傷後成長(posttraumatic growth: PTG)の特徴と関連要因を明らかにする.【方法】同意を得た死別後1~4年の遺族42名に,郵送で無記名の自己記入式質問紙調査を行った.【結果】37名(有効回答率97%)に回答を得た.PTGI総得点項目平均値は2.63で,先行研究の一般病院や緩和ケア病棟のがん患者遺族と同程度であった.そして,PTGI総得点は情動焦点型コーピング,認識評価的サポート,情緒的サポートと正の相関を示した.また,自宅療養した遺族のPTGI総得点は,しなかった遺族より有意に高かった.【結論】遺族が悲嘆感情を上手く切り替えることができるか,ソーシャルサポートを受けられるか,またそのネットワークがあるかをアセスメントし,支援提供の場について情報提供をしていく必要がある.また,患者が自宅療養できる支援体制の整備も必要である.

  • 石川 孝子, 福井 小紀子, 岡本 有子
    2018 年 13 巻 2 号 p. 153-162
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/25
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    【目的】終末期がん患者の死亡場所の希望と実際の一致を促進する可能性のある,訪問看護師による予後理解を促す支援の実施の促進要因を明らかにする.【方法】無作為抽出した全国1,000事業所の訪問看護師に,無記名質問紙調査を実施した.【結果】374名のうち,予後理解を促す支援をした割合は27.8%であった.予後理解を促す支援の実施の促進要因は,医師による患者への余命の告知あり(オッズ比3.22: 95%信頼区間1.81-5.73),予後理解を促す支援は看護師が説明すべきと認識している(2.12: 1.02-4.43),患者へ予後理解を促す支援の必要性を認識している(1.54: 1.08-2.21),1年間のがん患者の自宅看取り数が5人以上(1.78: 1.04-3.05)であった.【結論】患者の希望死亡場所の実現を目指し,訪問看護師による予後理解を促す支援の実施を促進するためには,上記4項目の推進の必要性が示された.

  • 宇根底 亜希子, 河野 彰夫, 冨田 敦和, 石榑 清, 杉村 鮎美, 佐藤 一樹, 安藤 詳子
    2018 年 13 巻 2 号 p. 187-193
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/11
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    【目的】ゲムシタビン(GEM)による血管痛の関連要因を明らかにする.【方法】2014年6月~2015年5月にGEMを末梢静脈より投与した患者の投与記録を抽出し,患者背景および投与状況と血管痛の関連について後方視的解析を行った.【結果】すべての項目に記載のある延べ400件(患者数50名)を対象とした.血管痛は79件(19.8%)に生じており,血管痛の関連要因は,性別(女性>男性),年齢(65歳未満>75歳以上),BMI(25 kg/m2以上>25〜18.5 kg/m2>18.5 kg/m2未満),剤形(液剤>凍結乾燥製剤),投与部位(手背部>前腕部>上腕および肘窩部)であった.【考察】血管痛を避けるためには上腕および肘窩部からの投与が推奨され,血管痛の関連要因を有する患者では,温罨法などの予防策を積極的に講じることが望ましい.

  • 秋月 晶子, 秋月 伸哉, 中澤 葉宇子, 安保 博文, 伊勢 雄也, 岡本 禎晃, 海津 未希子, 品田 雄市, 山代 亜紀子, 坂下 明 ...
    2018 年 13 巻 2 号 p. 195-200
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/29
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    【緒言】緩和ケアチーム数は年々増加しているが,活動実態にはばらつきがある.緩和ケアチームの質を評価,向上する方法として開発した「緩和ケアチームセルフチェックプログラム」の実施可能性を評価した多施設調査の結果を報告する.【方法】2016年2月,7施設で試験的にプログラムを施行し,施行後にチームリーダー,参加者にアンケートを行い,実施可能性について評価した.【結果】実施できたのは6施設,参加者は52人であった.実施時の困難として,時間的制約,スケジュール管理,意見集約の困難さなどが挙げられた.チームリーダーの全員,参加者の87.8%がプログラムはチームの課題抽出と改善に有用と答えた.また,改善計画立案プロセスと計画に83.3%がリーダーとして満足と答えた.【結論】いくつかの困難感はあるものの,参加者の大半が有用と評価しており,本プログラムは実施可能であった.

  • 佐竹 陽子, 荒尾 晴惠
    2018 年 13 巻 2 号 p. 201-208
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/14
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    研究目的は,救急領域で終末期ケアを実践する看護師の葛藤を明らかにすることである.救急看護に従事する看護師11名を対象に半構造化面接を実施し,内容分析を行った.その結果,[救命と看取りの混在][患者や家族のニーズの捉えにくさ][看護の目標の不確かさ]という救急領域の特徴が看護師の葛藤を引き起こしていた.葛藤には,[終末期ケアを実践する環境への葛藤][倫理原則に関する葛藤][家族や医療チームとの関係性から生じる葛藤][確信がもてないまま実践する看護ケアへの葛藤]という看護の役割を果たせないと感じる葛藤や,[看護師としての死生観がうむ葛藤]という看護師の心理的負担があった.救急という特殊な状況での終末期ケアとして看護の役割を検討すること,看護の目標は経過に応じて検討し医療チームや家族と共有すること,看護師への心理的支援としてデブリーフィングの機会をもつことの必要性が示唆された.

短報
  • 野里 洵子, 垂見 明子, 松本 禎久, 西 智弘, 宮本 信吾, 木澤 義之, 森田 達也, 森 雅紀
    2018 年 13 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/27
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    日本における緩和ケアの研修制度は確立しておらず,若手医師の緩和ケア研修に関するニーズはほとんど満たされていない.そこで,緩和ケア医を志す若手医師を対象として,自由記述を含む質問紙調査を行い,緩和ケアの研修・自己研鑽に関するニーズと考えられる方策について意見を収集し,自由記述の質的分析を行った.対象者284名に対して,回答者は253名(89%)であった.初期研修医・緩和ケア専門医・卒後16年目以上を除く229名を解析対象とした.そのうち自由記述は,80名(35%)から回答を得た.自由記述合計162意味単位を分析対象とした.その結果,若手医師が考えるニーズや方策として,専門医になるための研修内容,認定施設,研究力の向上,学ぶ場やツール,資格や制度の見直し,ネットワーキングの強化などが抽出された.本研究の知見は,今後,緩和ケア医を志す若手医師に対する研修制度の変革を行う際に役立つと考えられる.

  • 犬丸 杏里, 玉木 朋子, 横井 弓枝, 冨田 真由, 藤井 誠, 辻川 真弓
    2018 年 13 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/11
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    【目的】終末期ケアシミュレーション(terminal care simulation: TCS)参加者がTCSを通して何を感じたかを質的に明らかにすることを目的とした.【方法】TCS後に振返り用紙への自由な回答を求め,その内容を質的に分析した.【結果】参加者39名.振返り用紙へ記載された内容は334記録単位に分割でき〈コミュニケーションに関する知の獲得〉〈実施方法への評価〉〈看護に関する自己の理解〉〈看護に関する自己の肯定的見通し〉〈終末期に関する知の獲得〉〈場の雰囲気に対する評価〉〈学習機会の取得〉〈看護に関する自己の肯定的変化〉〈デブリーフィングの効果〉〈経験への評価〉〈リアリティの実感〉〈看護の知の獲得〉〈教員の関わりに対する評価〉の13カテゴリーが形成された.【考察・結論】現実的な感覚が結果に現れたことから,模擬患者の協力がTCSでの現実味の体験に貢献したと考える.

総説
  • 天野 晃滋, 森田 達也
    2018 年 13 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/27
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    がん悪液質の病態に基づく患者と家族の食に関する苦悩への関わり方の解明は不十分だが,その要点は,1)患者と家族の食に関する苦悩に注意を向ける,2)がん悪液質の影響を抑制できれば患者と家族の食に関する苦悩は軽減できる,3)患者と家族の食に関する苦悩の主な原因はがん悪液質についての理解不足・体重増加の失敗体験・死の予兆としての認識,そして患者と家族の食に関する感情の衝突である,4)患者と家族にがん悪液質の病態と食に関する苦悩の要因を説明し付随する問題の対処についてアドバイスする,5)がんの進行にともない患者と家族の食に関する苦悩は増強するので個々の患者と家族にあった緩和ケアと栄養サポートを検討する,にまとめられる.がん悪液質に起因する食に関する苦悩には患者と家族で固有のものもあれば双方の関係で生じるものもある.それら苦悩の要因と過程をふまえた緩和ケアと栄養サポートが求められる.

症例報告
  • 谷川 明希子, 片山 寛次
    2018 年 13 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/18
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    強オピオイドは癌性疼痛に有用であり,副作用は悪心・嘔吐,眠気,便秘等が知られ,過量投与では呼吸抑制や意識障害をきたす.今回,強オピオイド開始直後に悪心と羞明,少量で意識障害と縮瞳をきたした症例を経験した.79歳男性が肝細胞癌stage IVBで肋骨転移あり,癌性疼痛を認めた.除痛のための強オピオイド開始直後に強い悪心と羞明を認めた.オキシコドン塩酸塩水和物は強い悪心で中止し,モルヒネ硫酸塩水和物は羞明で中止した.フェンタニル貼付製剤は1 mgで一過性の健忘,2 mgで縮瞳と意識障害を認め,中止した.呼吸抑制は認めなかった.強オピオイドは羞明もきたしうる.少量でも縮瞳や意識障害をきたす症例もある.強オピオイド開始時に強い副作用や羞明を認めた場合には,少量でも縮瞳や意識障害をきたす可能性があり,注意した観察が必要である.

活動報告
  • 友松 裕子, 井戸 智子, 壁谷 めぐみ, 湯浅 周, 古賀 千晶, 長尾 清治, 太田 信吉, 伊奈 研次
    2018 年 13 巻 2 号 p. 163-167
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/04/25
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    電子付録

    余命が限られているがん患者にとっては,終末期を過ごす療養の場所を適切に選択することは極めて重要である.地域の緩和ケアに関わっている医療スタッフとの連携を深めるために,東名古屋在宅医療懇話会を組織し,緩和ケア情報共有ツールを作成した.緩和ケア情報シートを用いて当院から紹介した35例のうち,25例が慢性期病院に転院し,10例は在宅医療を受けた.死亡場所の内訳は,緩和ケア病棟が23人,自宅が6人,当院が4人であった.紹介先スタッフを対象とした質問紙を用いた調査を行ったところ,緩和ケア情報共有ツールの導入は,患者の予後や患者・家族の病識と説明内容に対する理解度合い,医療や予後に対する考えに関する情報を得ることに繋がり,緩和医療の質向上に有用であることが示された.本活動は,シームレスな緩和ケアの実現に貢献し,地域の医療スタッフが責任を分担して最適な緩和ケアを提供することを促進すると考えられた.

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