Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
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原著
緩和ケア病棟のケアの質および遺族の悲嘆・うつの地域差:全国遺族調査の結果から
米永 裕紀青山 真帆森谷 優香五十嵐 尚子升川 研人森田 達也木澤 義之恒藤 暁志真 泰夫宮下 光令
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電子付録

2018 年 13 巻 3 号 p. 235-243

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Abstract

緩和ケアの質や遺族の悲嘆や抑うつの程度に地域差があるかを目的とし,2014年と2016年に実施された全国遺族調査のデータの二次解析を行った.ケアの構造・プロセスはCare Evaluation Scale(CES),ケアのアウトカムはGood Death Inventory(GDI),悲嘆はBrief Grief Questionnaire(BGQ),うつはPatient Health Questionnaire 9(PHQ-9)で評価した.関東をリファレンスとし対象者背景で調整し,比較した.CESとGDIは調整後も九州・沖縄で有意に高かった(p<0.05).BGQは調整後も中部,近畿,中国,九州・沖縄地方で有意に低かった(p<0.05).PHQ-9は調整後,有意差はなかった.いずれのアウトカムも効果量は小さく地域差がほぼないと考えられ,ケアの提供体制は地域で大きく変わらないことが示された.

緒言

ホスピス・緩和ケア病棟で亡くなるがん患者は2011年には8.4%, 2014年には10.5%と増加している1,2).高齢化が進み,今後もがん罹患率・死亡率が上昇することが予測され,ホスピス・緩和ケア病棟の需要が高まるだろうと予想される.したがって,緩和ケア病棟の満足度やケアの質などがわが国全体で均等に提供されていることが重要だと考えられる.

わが国のホスピス・緩和ケアに対する患者や家族の評価は高い.過去に実施された全国遺族調査(J-HOPE研究)では,ケアの構造・プロセスは70%後半〜80%以上で肯定的な回答となっている35).とくに医師や看護師をはじめとするスタッフの患者や家族に対する対応やケアについて,どの施設も肯定的評価が90%以上と非常に高く評価されている.また,アウトカムである満足度や望ましい死の達成度では,項目や施設ごとに差はあるものの80〜90%が肯定的な評価を示している5).ゆえに今後も高い水準でのケアの提供と質の維持が必要である.

また,わが国のがん対策では全国で質の等しいケアの提供が前提とされているが,地域によりホスピス・緩和ケア病棟の病床数や診療体制など一定の基準を満たしているものの多様性があることが言われており,その違いが患者に提供されるケアの質に影響していると考えられる6).しかし,緩和ケア病棟の満足度やケアの質などに地域差が生じているかどうかは明らかでない.

加えて,がん患者の家族や死別後の遺族も緩和ケアの対象であり,このことは世界保健機関(WHO)でも定義されている7).死別後の遺族は複雑性悲嘆や大うつ病などの気分障害,そのほかの健康障害を抱える割合が高いことが明らかになっており,Aoyamaらの研究では,複雑性悲嘆を有する遺族は13%,中等度以上の抑うつの症状を有する遺族は23%だった8).さらに先行研究では,地域性や文化によって冠婚葬祭や死生観に違いがあり,その違いは悲嘆過程に影響すると考えられる9,10).2014年のうつや躁うつを含む気分障害の総患者数は,1番多い愛媛県と少ない山口県との間で人口10万あたり1,000人以上の差があり11),うつを含む気分障害を罹患している患者数は地域によって異なることが示されている.しかし,死別後における遺族のうつの罹患率の違いは明らかになっていない.これらから,死別後の遺族の悲嘆やうつについて地域差があるのかどうかについて明らかにすることが必要である.

したがって本研究の目的は,提供されている緩和ケアの質や患者の望ましい死の達成,さらに遺族の複雑性悲嘆や抑うつの程度に地域による差があるのかを明らかにすることである.

方法

調査方法

全国遺族調査「遺族によるホスピス・緩和ケアの質の評価に関する研究(J-HOPE研究)」として,2014年に実施されたJ-HOPE3研究12)および,2016年に実施されたJ-HOPE2016研究のデータを統合し,二次解析を行った.J-HOPE3研究・J-HOPE2016研究は,ともに自記式質問紙調査による郵送調査・施設背景調査である.

調査対象

J-HOPE3研究およびJ-HOPE2016研究の調査対象は以下である.

日本ホスピス緩和ケア協会会員施設のホスピス緩和ケア病棟のうち,J-HOPE3研究の参加に同意した133施設とJ-HOPE2016研究の参加に同意した71施設に調査を行った.J-HOPE3研究では参加を同意した遺族の中で2011年11月1日〜2014年1月31日に死亡した患者のうち後述する選択基準を満たす1施設80名を連続後向きに同定し対象とした.期間内の適格基準を満たす死亡者数が80名以下の場合は全例を対象とした.J-HOPE2016研究では参加を同意した遺族の中で2013年11月1日〜2016年1月31日の間に死亡した患者のうち後述する選択基準を満たす1施設80名を連続後向きに同定し対象とした.期間内の適格基準を満たす死亡者数が80名に満たない場合は全例を対象とした.

両研究とも適格基準は,①当該施設でがんのために死亡した患者の遺族(成人患者のキーパーソン,または身元引受人),②死亡時の患者および遺族の年齢が20歳以上,③患者の入院から死亡までの期間が3日以上の者とした.除外基準は,①遺族(キーパーソン,または身元引受人)の同定ができないもの,②退院時および現在の状況から遺族が認知症,精神障害,視覚障害などのために調査用紙に記入できないと担当医が判断したもの,③退院時および現在の状況から精神的に著しく不安定なために研究の施行が望ましくないと担当医が判断したもの,④家族にがんの告知がされていないもの,だった.

調査項目

患者・遺族背景

1.ケアの構造とプロセスの評価

ケアに対する評価尺度(Care Evaluation Scale version 2.0: CES 2.0)13)の短縮版を用いた.患者が亡くなる前1カ月以内に受けた医療についての遺族の評価であり,10項目合計60点満点を100点換算にして得点計算を行った.点数が高いほど受けた医療に肯定的な評価をしていることを示す.

2.ケアのアウトカムの評価

患者の終末期におけるQOLの評価尺度(Good Death Inventory: GDI)の短縮版14)を用いた.患者の望ましい死の達成度を遺族の視点から「からだのつらさをやわらげられていること」「望んだ場所で過ごすこと」など多くの人が共通して重要だと考える10のコアドメイン30項目がある.本研究では10のコアドメインから1項目ずつ抽出した短縮版GDIを使用した.それぞれの項目を「全くそう思わない」~「非常にそう思う」の6段,または「該当しない」の7段階で評価するものである.「患者様は人に迷惑をかけてつらいと感じていた」の項目については点数を逆転させて計算を行った.10項目70点満点として得点を算出した.点数が高いほど肯定的な評価であることを示す.

3.複雑性悲嘆

複雑性悲嘆のスクリーニング尺度としてBrief Grief Questionnaire(BGQ)日本語版15)を用いた.「患者の死を受け入れる大変さ」「大切な人をなくしたことによる悲嘆によりどのくらい生活に支障があるか」などの5項目について3段階で回答する信頼性・妥当性が検証されている尺度である.合計点が高ければ高いほど,悲嘆の程度は強く,8点以上で複雑性悲嘆の可能性が高い,5〜7点で可能性あり,1〜4点で可能性が低いと定義されている.カットオフ値は,日本人への適応について詳細な検討はされておらず,欧米人の基準をそのまま適応可能かどうかという点で限界があり,本研究では病的な悲嘆でなく,悲嘆の強さに着目し,連続尺度として使用した.

4.抑うつの評価

抑うつのスクリーニング尺度としてPatient Health Questionnaire 9(PHQ-9)日本語版16)を用いた.9項目4件法の尺度であり,合計点が高ければ高いほど抑うつの程度が強く,0〜4点は症状なし,5〜9点は軽度,10〜14点は中等度,15〜19点は中等度〜重度,20点以上で重度の症状と定義されている.本研究の対象者は,すでにうつ等に罹患し,内服等の治療を行っている可能性がある遺族も含んでおり,臨床的にうつと診断される遺族の同定が目的ではないため,抑うつの強さに着目し,連続尺度として使用した.

5.人口統計学的因子および施設背景

人口統計学的因子として年齢,性別,最終卒業校,続柄,患者が入院中の家族のからだや心の健康状態,患者が亡くなる前1週間に付き添っていた日数,患者が入院中に付き添いを代わってくれる人がいたか,周囲の人が遺族にどのくらいいたわりや思いやりを示してくれたか,信仰している宗教などの項目について尋ねた.施設背景として,緩和ケア病棟の入棟条件,個室数,夜勤の医師の体制,看護体制,コメディカルの利用可能状況,実施可能な医療,遺族ケアの実施などの項目について尋ねた.病床数・医師数などについては,ホスピス緩和ケア協会から年次大会資料として公表されている項目は年次大会資料から情報を得た.

分析方法

まず,回答を北海道,東北,関東,中部,近畿,中国,四国,九州・沖縄地方の8地方に分け,CES,GDI,BGQ,PHQ-9それぞれの地域別の平均スコアを求め,関東地方をリファレンスとして,各地方と関東地方との平均スコアの差と標準偏差を算出した.差の大きさを示すためにCohen17)により定義された効果量(effect size: ES)を平均スコアの差と標準偏差の差から算出した.p値は地方別の平均スコアと関東の平均スコアで単変量分析を行った.

次にCES,GDI,BGQ,PHQ-9は患者・遺族背景によって影響を受ける可能性があるため18,19),地方別のCES,GDI,BGQ,PHQ-9の合計得点の平均に関して,「施設」を変量効果,「遺族性別」「患者年齢」「最終卒業校」「患者の亡くなる前1週間に付き添っていた日数」「信仰している宗教」「在院日数」「死別後の期間」を固定効果として混合効果モデルで調整した.固定効果としてモデルに投入したのは,単変量解析で地方によって有意な差のある変数であった.

すべての分析においてJMP Pro 13を使用した.有意水準は0.05とした

倫理的配慮

本研究は東北大学および研究参加施設の倫理委員会の承認のもとに実施した.

結果

施設背景

J-HOPE3研究の参加施設は133施設,J-HOPE2016研究の参加施設は71施設で計204施設だった.対象者19,212名(J-HOPE3: 12,231名,J-HOPE2016: 6,981名)のうち除外基準により2,743名〔J-HOPE3: 1,435名(12%), J-HOPE2016: 1,308名(19%)〕が除外された.主な除外理由としては,「入院期間が3日以内であった(J-HOPE3: 5%, J-HOPE2016: 9%)」であり,除外率とその内訳について,J-HOPE3研究とJ-HOPE2016研究で系統的な違いはなかった.16,268名(85%)(J-HOPE3: 10,630名,J-HOPE2016: 5,638名)に質問紙を送付し,12,129名(63%)(J-HOPE3: 8,036名,J-HOPE2016: 4,093名)から返信があった.回答拒否1,294名(7%)(J-HOPE3: 747名,J-HOPE2016: 547名)を除外する12,129名(63%)(J-HOPE3: 8,036名,J-HOPE2016: 4,093名)を本研究の解析対象とした.

対象者背景

対象者背景を表12に示す.患者背景は,全国で男性が56%(5,954名)であった.年齢は,65歳未満が19%(2,027名),65〜74歳が27%(2,940名),75歳以上が54%(5,827名)であった.がん原発部位は,肺が23%(2,516名)で,続いて肝臓・胆のう・胆管・膵臓が20%(2,107名),胃・食道が14%(1,554名),結腸・直腸が12%(1,348名)であった.遺族背景は,女性が66%(6,964名)だった.年齢は,60歳未満が42%(4,323名),60〜69歳が31%(3,239名),70歳以上が28%(2,928名)であった.続柄は,配偶者が44%(4,588名),子どもが38%(4,049名)であった.

地方ごとに有意な差が見られた項目は,患者背景では,年齢(p<.0001),原発部位(p<.0001),在院日数(p=0.02),死別後の期間(p<.0001)であった.遺族背景では,性別(p=0.02),年齢(p=0.02),最終卒業校(p<.0001),続柄(p=0.001),患者様の亡くなる前1週間に付き添っていた日数(p<.0001),信仰している宗教(p<.0001)の項目で地方ごとに有意な差が見られた.

表1 患者背景
表2 遺族背景

地方別参加率

地方別参加率を表3に示す.東北地方の参加率が81%と最も高く,次いで北海道地方が75%,中部地方が74%だった.また,中国地方の参加率が最も低く58%だった.

表3 地方別参加率

各尺度平均得点の比較

「CES」「GDI」「BGQ」「PHQ-9」の地方別平均得点を表4に示す.各項目について関東地方をリファレンスにして分析を行った.

CESの合計得点は,どの地域でも80点を超えていた.関東地方との比較では,九州・沖縄地方で82.2±13.54(平均±標準偏差)点(ES=0.16, p<.0001)と有意に高かった.GDIでは,九州・沖縄地方が関東地方と比べて47.9±8.25点(ES=0.12, p=0.0002)と有意に高い結果となった.近畿地方も47.5±8.17点(ES=0.06, p=0.04)と有意に高かった.BGQについては,北海道地方が4.11±2.46点(ES=−0.19, p<.0001),近畿地方が4.19±2.42点(ES=−0.16, p<.0001),九州・沖縄地方が4.25±2.37点(ES=−0.14, p<.0001)と有意に低かった.PHQ-9については,どの地方でも平均が6点台で大きな差はなかった.北海道地方では6.07±5.87点(ES=−0.08, p=0.04),近畿地方では6.14+5.81点(ES=−0.09, p=0.01)と関東地方と比較すると有意に低かったものの,ESはほとんどなかった.

「施設」を変量効果とし,単変量解析で地方間に有意な差がみとめられた「患者年齢」「原発部位」「在院日数」「死別後の期間」「遺族性別」「遺族年齢」「最終卒業校」「続柄」「患者の亡くなる前1週間に付き添っていた日数」「信仰している宗教」を固定効果として調節した各項目の地方別平均スコアでは,CESで九州・沖縄地方が80.8±29.5点(ES=0.03, p=0.004)と有意に高かった.GDIでは調整すると九州・沖縄地方が47.4±17.4点(ES=0.04, p=0.003)と有意に高かったが,近畿地方で有意な差はみとめられなくなった.BGQでは,調整後も中部地方が4.43±5.69点(ES=0.03, p=0.01),近畿地方が4.28±4.85点(ES=0.08, p<.0001),中国地方が4.30±6.66点(ES=0.06, p<.0001),九州・沖縄地方が4.35±4.83点(ES=0.06, p<.0001)と有意に低い結果となった.北海道地方では有意な差はみとめられなくなった.PHQ-9にでは,調整すると地域による有意な差はみとめられなくなった.

BGQとPHQ-9は,それぞれカットオフ値で2値化した解析を実施した(付録表1)が,上記連続変数として解析した場合と結果に大きな差異はみとめられなかった.

表4 地方別平均得点

考察

本研究は,わが国の地域間での差に焦点を当て対象者背景とケアへの評価の関係や悲嘆や抑うつの強さとの関係を明らかにした初めての研究である.この研究で主に明らかになった点は2つあり,(1)ケアの質(CES)と望ましい死の達成度(GDI)は調整後も九州・沖縄地方は関東地方に比べ有意に高い得点を示したが,他の地域では有意な差はみとめられなかったこと,(2)うつ(PHQ-9)は地域ごと有意な差がみとめられた変数で調整すると地域間での有意な差はみとめられなくなったが,悲嘆の程度(BGQ)は調整後も地域間での有意な差がみとめられたことである.

1点目として,CES・ GDIは調整した後も九州・沖縄地方が関東地方に比べて有意に高い得点を示したが,他の地域では有意な差がみとめられなかった.九州・沖縄地方が有意に高い結果となった理由として,一般的に九州地方は病床数が多く,緩和ケア病棟での死亡割合も全国と比較して高い20)ことが影響した可能性が考えられる.そこで,都道府県ごとの緩和ケア病床数と本研究のCES・GDIの得点との相関を調べたが,有意な相関はみとめられなかった(表5).このことから,緩和ケア病床数の多さ,すなわち,緩和ケア病床へのアクセスのしやすさが全体的なケアの質高さの評価に影響した要因では必ずしもないことが明らかになった.また,関東地方と九州・沖縄地方の平均得点を比べるとCESでは0.8点,GDIでは0.5点と1点に満たないわずかな差であり,効果量もCES・GDIいずれも0.1点未満と,極めて小さく,臨床的には差はないといえる.これらのことから,患者のケアの質の評価やアウトカムは地域による差がなく,均一なケアが提供されていると考えられる.

表5 県別の病床数とアウトカムの相関

2点目として,対象者背景で調整するとPHQ-9は地域間での差がみとめられなかったが,BGQには地域間での有意な差がみとめられた.

死別は多くの人が苦しみ,身体・心理面に大きな影響を与える経験で,うつの罹患率を上げることが明らかになっている9).日本の気分障害を抱える患者数は地域による差があることが明らかだが11),本研究の結果より遺族のうつの罹患率に地域による有意な差はみとめられなかった.この理由については,本研究では明らかではないが,一般人口と本研究対象である緩和ケア病棟で死別を経験した遺族の背景要因の違いが考えられること,実際にはうつに罹患していても服薬等治療によって症状が安定しており,PHQの得点にはうつの程度は反映されなかったことなどが考えられる.

悲嘆過程には文化・宗教的背景が影響すると言われている.宗教や文化的背景によって,儀式や死別の受容の仕方,死別後のサポートに違いがあると考えられるが,同じ宗教や文化的背景を持っていても,個々で儀式の方法や感情の表出の仕方が異なっている9, 21).坂口の研究では,お参りやお勤め・礼拝を「定期的にする」と回答した遺族や死んでも魂は残るとの信念が強い遺族において,複雑性悲嘆や大うつ病性障害が疑われる人の割合が高かったと報告されている10).本研究では地域性や文化の差が悲嘆に直接影響を与えたかどうかは明らかではないが,悲嘆が地域性や文化による違いの影響を受けやすい可能性があると示した.また,本研究結果からは明らかではないが,遺族ケア等サポートの提供体制についても地域差があった可能性がある.悲嘆の地域による有意差の詳細を明らかにするためには,より地域を詳細に分類し,提供された遺族サポートの違いや,具体的な葬送儀礼や死生観などについても焦点を当てた研究が必要である.

本研究の限界は,1)ケアの質・アウトカムの評価であるCES,GDIはそれぞれ遺族による代理評価であり,死別後から期間が経過したことによるリコールバイアスも入り得ること,2)地方別参加率が5〜8割と地方ごとにばらつきがあったこと,3)有意な差を示した項目においても,実際の差は1点以内というわずかな差であり,効果量も小さかったこと,4)施設ごと背景の比較ができなかったこと,5)悲嘆・うつの評価に用いたBGQ,PHQはどちらもスクリーニングツールであったこと,である.

結論

本研究により,対象者背景で調整すると,遺族によるケアの質の評価やアウトカム・うつに地域間で差はみとめられなかったが,悲嘆の程度は地域間での有意な差が認められた.このことは,悲嘆が文化・宗教的背景に影響を受けている可能性が高く,死別後の遺族への必要な支援が地域で異なる可能性を示唆している.

しかし,いずれのアウトカムも効果量は小さく地域差がほぼないと考えられ,ケアの提供体制は地域で大きく変わらないことが示された.

謝辞

J-HOPE3およびJ-HOPE2016にご協力いただいたご遺族ならびに研究参加施設の方々に心より御礼申し上げます.また,日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団,日本ホスピス緩和ケア協会の皆様のご支援・ご協力に感謝申し上げます.

利益相反

宮下光令:企業の職員・顧問職(NPO 法人日本ホスピス緩和ケア協会理事),原稿料(株式会社メディカ出版) 森田達也:講演料(塩野義製薬株式会社,協和発酵キリン株式会社) その他:該当なし

著者貢献

米永はデータの解析・解釈,原稿の起草に貢献;青山は研究の構想,データの解析・解釈,原稿の批判的推敲に貢献;五十嵐はデータの収集・分析・解釈,原稿の批判的推敲に貢献;森谷,升川はデータの解析・解釈,原稿の批判的推敲に貢献;森田,木澤,恒藤,志真,宮下は研究の構想,原稿の批判的推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2018日本緩和医療学会
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