Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
原著
悪液質高リスクの高齢進行がん患者に対する在宅ベースの下肢筋力トレーニングプログラムの開発─NEXTAC-ONE試験の運動介入の詳細─
立松 典篤岡山 太郎辻 哲也岩村 明田沼 明内藤 立暁光永 修一三浦 理大前 勝弘盛 啓太高山 浩一
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電子付録

2018 年 13 巻 4 号 p. 373-381

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Abstract

【目的】悪液質リスクの高い高齢進行がん患者に対して,初回化学療法導入時より栄養と運動を組み合わせたマルチモーダルな介入プログラムを開発した.本研究の目的は,その中の下肢筋力トレーニングの詳細と安全性および忍容性を報告することである.【方法】対象は,初回化学療法導入予定の70歳以上の進行非小細胞肺がんおよび進行膵がん患者30例とした.下肢筋力トレーニングは約8週間の在宅ベースプログラムとし,対象者別にトレーニング内容および負荷量を設定した.【結果】介入期間中の下肢筋力トレーニングの実施割合は91(69〜95)%であった.治療継続や日常生活に影響を及ぼすような有害事象発生はなく,介入前後で身体機能や活動量の有意な低下は認められなかった.【結論】悪液質リスクの高い高齢進行がん患者において,われわれが開発した下肢筋力トレーニングは高い実施割合を有し,身体機能や身体活動量の維持に寄与した可能性が示唆された.

緒言

悪液質とは,進行する骨格筋減少を特徴とする多要因の症候群である1).がん患者の場合,食欲不振による食事摂取量減少と代謝異常が組み合わさることで体重(骨格筋量)減少をきたしやすく,進行がん患者においては最大で約8割の患者が悪液質を合併していると報告されている2).悪液質をきたしているがん患者は,身体機能やQuality of Life(QOL)の低下がみられ3,4),抗がん治療のアドヒアランスが低く5),生存期間も短いことが知られている6,7).さらに,近年ではがん患者の高齢化が問題となっているが,悪液質が及ぼすデメリットは高齢がん患者においてはより一層深刻なものとなっている8,9)

悪液質に対する非薬物的介入の一つとして,近年では運動療法が期待されている.しかしながら,2014年にコクラン・ライブラリーから公表されたがん悪液質に対する運動介入のシステマティック・レビューでは,良質にデザインされた臨床試験(ランダム化比較試験など)は存在せず,エビデンスの乏しい領域とされている10).その報告以後,現在までにおいても中規模以上のランダム化比較試験でポジティブな成果を報告した研究はなく,未だにがん悪液質に対する標準的な運動処方は確立されていない.一方で,悪液質の発症リスクの高い進行がん患者に対する運動介入の効果に関しては,複数のシステマティック・レビューにて身体機能や倦怠感,QOLなどへの有効性が示されているが,同時に介入プログラムの脱落率が高いことやアドヒアランスが低いことが課題として挙げられている11,12).実際,悪液質に対する治療的介入は,運動療法や栄養療法,薬物療法などを集学的に行うマルチモーダル介入の必要性が示唆されているが13,14),マルチモーダル介入を行った先行研究では,栄養や運動療法の継続が困難であったと報告されている15).このようにアドヒアランスが低くなる要因としては,悪液質を有する進行がん患者の脆弱性や治療に伴う副作用の出現などが考えられる.したがって,悪液質を有する進行がん患者のような脆弱な集団においても継続的に実施可能なプログラムの開発が求められている.

そこでわれわれは,悪液質リスクの高い高齢進行がん患者に対して,初回化学療法導入時より栄養と運動を組み合わせたマルチモーダルな介入プログラム(NEXTAC program: The Nutrition and Exercise Treatment for Advanced Cancer program)を開発し,その安全性・忍容性試験を行った(NEXTAC-ONE試験).本研究の目的は,NEXTAC-ONE試験の中の下肢筋力トレーニングに焦点を絞り,その運動処方の詳細と安全性および忍容性を報告することである.

方法

対象

本試験は2016年8月より国内4施設(京都府立医科大学附属病院,国立がん研究センター東病院,静岡県立静岡がんセンター,新潟県立がんセンター新潟病院)で実施した多施設前向き臨床試験である(UMIN000023207).対象者の適格基準は,(1)進行期の非小細胞肺がんまたは膵がん,(2)同意取得時の年齢が満70歳以上,(3)一次治療として化学療法が予定されている(6カ月以上前に完遂している術後補助化学療法または化学放射線療法は除く),(4)Eastern Cooperative Oncology Group performance status(ECOG PS)が0-1,(5)Barthel index(BI)が90点以上,(6)試験期間を通じて支援が可能な家族または友人が少なくとも一人以上存在している,とした.心疾患,骨関節疾患,神経疾患などにより安全な評価または介入が困難と判断される患者,精神病や精神症状により試験への参加が困難と判断される患者は除外とした.すべての対象者に対して書面による説明と同意を行った.本試験は各施設において倫理審査委員会の承認を得た.

評価時期と評価項目

すべての対象者は説明と同意取得後より7日間以上活動量計を装着し,介入前の身体活動量を測定した(T0ポイント).その後,初回化学療法開始前にベースライン評価を行い(T1ポイント),その後は4週ごとに評価を行った(T2ポイント:T1から4±2週間後,T3ポイント:T1から8±2週間後).それぞれの評価時期における評価項目を以下に示す.

1.基本情報

年齢,性別,ECOG PS,がん種,がんステージ,がん治療内容,併存疾患,生活習慣,過去6カ月における体重減少率,がん悪液質や骨格筋減少の有無をT1ポイントにて評価した.がん悪液質の有無に関しては,国際コンセンサス基準1)に基づき,(1)過去6カ月間に5%以上の体重減少,(2)BMI<20.0 kg/m2かつ2%以上の体重減少,(3)骨格筋減少(サルコペニア)かつ2%以上の体重減少のいずれかを満たした場合に悪液質と診断した.骨格筋減少の有無に関しては,第3腰椎レベルのCT画像を用いて,画像解析ソフト(slice-O-matic software)にてHounsfield Unitが−29〜150で同定される部分を骨格筋断面積として求め,その骨格筋断面積を身長の二乗で除すことで算出される骨格筋指数(Skeletal muscle index: SMI)を用いて判断した(カットオフ値:男性:<43.0 cm2/m2かつBMI<25.0 kg/m2, <53.0 cm2/m2かつBMI≥25.0 kg/m2, 女性:<41.0 cm2/m216)

2.体組成

体組成として,Body Mass Index(kg/m2)および骨格筋指数(SMI)を介入前後のT1およびT3ポイントで評価した.

3.身体機能

身体機能として,6分間歩行距離(m),歩行速度(m/sec),5回立ち上がりテスト(sec),握力(kg)を介入前後のT1およびT3ポイントで評価した.

(1)6分間歩行距離

6分間歩行距離テストの標準的ガイドラインに従い17),以下のように測定した.片道30 mの直線距離を往復しながら6分間歩行してもらい,その6分間での総歩行距離を算出し,6分間歩行距離とした.

(2)歩行速度

10 mの直線距離を準備し,静止立位で一方の端からスタートする.普段通りの快適な速度で歩いてもらい,10 mの直線距離の3〜8 m(5 m)を通過する時間を測定した18)

(3)5回立ち上がりテスト

膝関節の屈曲角度が約90°となる座面の高さの椅子を用意し,胸の前で両手を組んだ状態で5回連続立ち座りの動作を行い,所用時間を測定した19)

(4)握力

測定は静止立位で行った.手指の第2関節が90°となるように握力計のアームを調整し,左右ともに2回ずつ測定を行った.左右それぞれの最大値より平均値を算出した.

4.身体活動量

身体活動量は対象者に加速度計付き歩数計(ライフコーダGS®,スズケン株式会社)を用いて,1日の平均歩数を測定した.対象者には,起床後活動を開始する時点で歩数計を装着し,就寝前まで装着を継続するよう指導した.歩数計の装着時間が1日5時間以上であることを装着の基準とし,5時間を下回っている日は解析から除外した20)

NEXTACプログラムの概要

NEXTACプログラムは,3回の運動セッションおよび3回の栄養セッションからなる合計6セッションで構成されている(表1).運動プログラムは下肢筋力トレーニングと身体活動量促進プログラムから構成され,栄養セッションは食事指導とサプリメント摂取(Inner Power®,大塚製薬)から構成されている.T1ポイントを導入期,T2・T3ポイントを維持期として,4±2週間ごとに2カ月間のフォローアップを行う.

表1 NEXTACプログラムの概要

下肢筋力トレーニングの内容

NEXTACプログラムにおける下肢筋力トレーニングは,椅子座位での膝関節伸展や屈曲,起立訓練などの3または5種類のメニューで構成され(付録図1),重錘使用の有無などで3段階の強度レベルを設定した.各対象者においては,最初にレベル2の運動プログラムを10回×3セット実施してもらい,実施後の疲労感を修正Borgスケールにて評価を行った.修正Borgスケール3〜5となるように強度レベルを設定し,10回×3セットを毎日継続して実施することを基本処方とした(図1).一方,体調不良時には中断なく継続できるよう,メニュー数や回数の自己調整法を指導した(修正処方).修正処方の具体的な方法としては,①:「10回×3セットを連続して行う」の基本回数を,「10回×3セットを1日の中で分けて行う」または「10回×1〜2セットに減らして行う」と負荷量を軽減して継続する,②:①で継続が難しい場合は,運動の種類を減らして継続する,③:②で継続が難しい場合は運動の実施頻度を2〜3日に1回に減らして継続する,④:体調回復時には速やかに基本処方へと戻す,とした.上記の手順で対象者が自己調整を行えるように指導し,修正処方の内容がわかるように運動・食事日記(付録図2)に記載することとした.

図1 下肢筋力トレーニングのレベル別プログラム内容と処方アルゴリズム

統計解析

本試験の主要エンドポイントはNEXTACプログラム(栄養および運動セッション)への参加割合であり,全6セッション中4セッション以上の参加が可能であった対象者の割合を算出した.参加割合の期待値を70%,閾値を45%と設定し,αエラーを0.1(両側),βエラーを0.2とすることで必要症例数は24例となり,若干の逸脱を考慮して,予定登録患者数は30例とした.下肢筋力トレーニングの実施割合に関しては,各対象者における運動日誌の記録から,(日誌記載日数)/(介入期間)×100(%)で算出した.体組成および身体機能,身体活動量の介入前後での比較は,ウィルコクソンの符号順位検定を用いて行った.有意水準は5%とした.

結果

研究参加の流れ(付録図3)

本試験は2016年8月より試験を開始し,2017年5月までに予定していた30名の登録を終え,すべてのデータ収集は2017年11月に完了した.国内4施設にて選択基準に該当したのは46名であり,研究参加の同意が得られた30名を対象に介入を開始した.主な不同意の理由としては,「化学療法の導入に至らなかった」「他の臨床試験への参加を希望された」「試験参加への拒否」などであった.T1〜T2の期間に全身状態の悪化により1名が脱落したが,残りの29名(96.7%)は介入プログラムの完遂が可能であった.

患者背景(表2

試験の登録した30名の年齢中央値は75(70-84)歳であり,男性20名(67%),女性10名(33%)であった.原発巣は非小細胞肺がん24名(80%),膵がん6名(20%)であり,治療は細胞障害性抗がん剤20名(67%),分子標的薬10名(33.3%)であった.対象者の中の12名(40%)にがん悪液質が認められ,21名(70%)がすでに骨格筋減少を有していた.運動習慣ありと答えたのは14名(47%)であり,約半数が運動習慣のない集団であった.

表2 対象者の基本情報(N=30)

下肢筋力トレーニングの実施割合(表3

介入期間の中央値は57(51-65)日であり,その期間の運動日記記載割合の中央値(四分位範囲)は94(51-98)%であった.全期間における基本処方プログラムおよび修正処方プログラムの実施割合は41(3-79)%と42(7-66)%であり,両者を合わせると下肢筋力トレーニングの実施割合は91(69-95)%であった.期間を4週ごとに分けてみてみると,基本処方プログラムの実施割合は前半4週間が56(4-79)%であるのに対して,後半4週間は17(0-88)%と低下していた.その一方で,修正処方プログラムの実施割合は前半4週間の29(7-58)%に対して,後半4週間は42(0-81)%と増加していた.

表3 下肢筋力トレーニングプログラムの実施割合

下肢筋力トレーニングに関連した有害事象発生に関して

下肢筋力トレーニングに関連した有害事象発生は,筋肉痛(CTCAE grade 2)2名,関節痛(grade 1)1名,労作時呼吸困難感(grade 1)1名,足底筋膜炎(grade 1)1名であった.しかしながら,どれも軽症かつ一時的な症状で休息により改善し,抗がん治療や日常生活に影響を及ぼすようなものではなかった.

体組成・身体機能・身体活動量の介入前後での比較結果(表4

介入前後でBMI(−0.4±0.2 kg/m2),骨格筋指数(−1.1±0.5 cm2/m2),6分間歩行距離(+12.3±10.9 m),歩行速度(+0.02±0.04 m/sec),握力(+0.2±0.5 kg)は統計学的に有意な変化を認めなかった.一方で,5回立ち上がりテスト(−0.5±1.0 sec)は統計学的に有意に短縮した(ウィルコクソンの符号順位検定,p<0.05).身体活動量に関しても,介入前後で統計学的に有意な変化(+417±401歩)を認めなかった.

表4 体組成・身体機能・身体活動量の介入前後の変化量

考察

NEXTAC ONE試験の下肢筋力トレーニングは,初回化学療法を受ける高齢者の進行がん患者に対して,既報に比して高い実施割合と安全性を有し,実施可能性の高いトレーニングであることを確認した.一般に進行がんを有する高齢者は,悪液質による代謝異常や過度な安静により骨格筋量の減少や機能障害をきたしやすいため21,22),マルチモーダルな予防的プログラムの必要性が示唆されてきた13).しかしながら,介入メニューが多彩となり,プログラムが複雑かつ在宅ベースの場合には,継続性やコンプライアンスが低下しやすくなることが危惧されている23).実際,本試験と同様に悪液質リスクの高い進行がん患者を対象としたPre-MENAC試験においても,運動療法や栄養療法のコンプライアンスが低く,身体機能アウトカムに有意な効果を見出すことができなかったと報告されている15).そこで,われわれは下肢筋力トレーニングが一定の実施割合が維持されるよう,様々な工夫を行った.具体的には,①一次治療と同時にトレーニングを開始すること,②低強度(修正Borgスケール3〜5)・高頻度(原則,毎日実施)・在宅ベースのプログラムとなっていること,③体調に応じて,対象者自身で負荷量等を調整することができる(修正処方の導入),④応援してくれる家族または友人がいること,などである.以上の結果,各患者の介入期間のほぼ9割以上の期間で下肢筋力トレーニングが実施された.対象者が高齢かつ治療期の進行がん患者であることや在宅ベースのトレーニングである点を考慮すると,NEXTACプログラムの下肢筋力トレーニングの実施割合は良好な結果であったと考えられる.

本試験における下肢筋力トレーニングが高い実施割合を維持できた要因としては,以下の点が考えられる.まず一つ目は,トレーニングの種類を最小限にとどめ,かつ負荷量を低強度に設定した点である.今回の対象者は約4割が悪液質を有しており,約7割の対象者にいたってはすでに骨格筋減少(サルコペニア)をきたしていた.このように対象者が脆弱な集団であるため,修正Borgスケールを用いて個人の主観的な疲労度にて負荷量を低強度に設定することで,無理なく継続できるトレーニングとした.実際,今回のトレーニングに関連する有害事象発生は軽微かつ治療継続や日常生活に影響を及ぼさない程度の症状にとどまっており,本試験の脆弱な集団においても安全に実施可能であることが示唆された.次に二つ目は,がんの進行または化学療法の副作用に伴う体調不良によってトレーニングが中断してしまうことを最小限にするために,患者自身で負荷量などを調整することができるように修正処方を適応した点である.今回のトレーニングは在宅ベースを基本としているため,医療者が毎日の体調変化に合わせた形でトレーニング処方を行うことが難しい.したがって,患者自身で自主的に調整を行うことを許可することで,トレーニングの継続性が途切れるリスクを軽減した.実際,介入期間が後半になるにつれて基本処方トレーニングの実施割合は低下したものの,修正処方トレーニングの実施割合が増加したことでトレーニングは継続され,全体としての実施割合も維持される結果となった.最後に三つ目は,NEXTACプログラム全体を行動変容理論(Behavioral change techniques: BCTs)の基本を取り入れた形で構成した点である.BCTsでは「明確な目標設定」,「危機意識の教育」,「具体的な行動計画」,「セルフモニタリング」,「フィードバック」,「社会的支援」などが行動変容を促進し,それを維持するために重要とされている24).これらを踏まえて,NEXTACプログラムでは,共通のパンフレットを用いて多職種(医師,看護師,栄養管理士,リハビリテーション療法士など)から繰り返しオリエンテーションを行い,介入プログラムの必要性と目標設定,それらを行わない場合にどんな危機的状況が起こり得るのかといった点を対象者と共有した.そして,プログラム開始後は運動日誌を用いたセルフモニタリングに加えて,定期的(月1回)に外来にて医療者がフィードバックした.また,本試験では家族または友人などの支援者に可能な限り介入に同席いただいた点も,プログラムの高い実施割合ならびに継続性に寄与したと考えられる25)

下肢筋力トレーニングがアウトカムに与える効果に関しては,負荷量が低強度であったのにもかかわらず,骨格筋量および身体機能,身体活動量の維持に寄与した可能性がある.初回化学療法を施行した高齢進行非小細胞肺がん患者を対象とした先行研究では,化学療法開始後3カ月において,骨格筋量や身体機能は有意に低下したと報告されている21).したがって,本試験の下肢筋力トレーニングは,骨格筋量や身体機能の低下を予防する効果が期待できる可能性がある.本試験の対象者と同様に脆弱な集団と考えられる地域在住一般高齢者を対象とした先行研究では,低強度の在宅ベースでのトレーニングが骨格筋量や筋力,歩行速度の維持向上に有用であったと報告されている26).また,近年では,高齢者においては低強度であっても十分な回数(頻度)を担保することで,筋力トレーニングの有用性が明確になってきている27,28).本試験の下肢筋力トレーニングは負荷量を低強度に設定する一方で,可能な限り毎日継続して実施することで,骨格筋量や筋力などを維持することができたと考えられる.

本研究には三つの限界がある.まず一つ目は,下肢筋力トレーニングの実施割合は自己記入式の運動・食事日記データより算出されているため,思い出しバイアスのリスクがある.二つ目は,本研究においては化学療法適応のボーダーライン上にあるような脆弱な集団(ECOG PSが2またはBIが90点未満,高齢独居など)は対象外としているため,悪液質高リスクの高齢進行がん患者の中でも比較的状態のよい患者集団を選択している可能性がある.最後に,本研究の目的はNEXTACプログラムの下肢筋力トレーニングの安全性および忍容性の検討であり,体組成,身体機能などの変数の前後比較はあくまで探索的考察を導くための副次的評価である.以上より,結果の一般化には限界があり,プログラムの有効性を示すために対象者数の増加と対照群を設定した第二相試験(NEXTAC-TWO)が現在進行中である(UMIN000028801).

結論

悪液質高リスクの進行がんを有する高齢がん患者において,NEXTACの下肢筋力トレーニングは高い実施割合を有し,身体機能や身体活動量の維持に寄与した可能性が示唆された.

謝辞

本研究は,国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「平成28年度革新的がん医療実用化研究事業 悪性腫瘍に伴う悪液質の標準治療の確立(高山班) 課題管理番号:JP18ck0106212」の助成を受けて行われた.

利益相反

著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

立松,岡山,内藤,高山は研究の構想・デザイン,研究データの収集・分析・解釈,原稿の起草に貢献;辻,光永,三浦は研究の構想・デザイン,研究データの収集・分析・解釈に貢献;岩村,田沼は研究データの収集・分析に貢献;大前,盛は研究の構想・デザイン,研究データの分析・解釈に貢献した.すべての著者は原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献し,投稿論文ならびに出版原稿の最終承認,および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2018日本緩和医療学会
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