Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
原著
外来がん化学療法患者を対象とした苦痛のスクリーニングの導入─苦痛対応に必要なリソースに関する分析─
二宮 一美大谷 哲也田中 裕子工藤 満美子三富 弘子佐藤 大輔野本 優二伊藤 和彦片柳 憲雄
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2019 年 14 巻 1 号 p. 15-21

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Abstract

がんの苦痛スクリーニングで対応に必要なリソースを求め,円滑な緩和ケア提供の条件を求めることを目的とした.2017年3月までの2年間の外来がん化学療法1479例を対象としSTAS-J症状版でスコア2以上を有症状とした.有症状は181例(12.2%),リソースは12職種,延べリソース数は288件だった.対応は認定看護師・薬剤師による「直接介入」153件,「主治医対応」98件,「その他リソースの対応」37件だった.不安等の精神症状は「直接介入」(61件,39.9%)が「主治医対応」(10件,10.2%)より有意に高頻度だった(p<0.0001).身体症状への対応は「主治医対応」(88件,89.8%)が「直接介入」(92件,60.1%)より有意に高頻度であった(p<0.0001).がんの苦痛対応には多くのリソースが必要で,認定看護師・薬剤師の直接介入と患者振り分けが緩和ケアデリバリーに有用である.

緒言

2014年1月に「がん診療連携拠点病院等の整備に関する指針」1)が通知され,がん患者に対する苦痛のスクリーニングの実施は,がん診療連携拠点病院では必須となった.その内容は,①がん患者の身体的,精神的,社会的苦痛等のスクリーニングを診断時から外来および病棟にて行うこと,②院内で一貫したスクリーニング手法を活用すること,③緩和ケアチームと連携し,スクリーニングされた苦痛を迅速かつ適切に緩和する体制を整備することである.しかし,スクリーニング方法の選択および運用や,有症状患者への対応については詳しく定められているわけではない.

本邦では2007年頃から複数の病院でがん患者に対する苦痛のスクリーニングの導入が試験的に行われていた2).2008年には,緩和ケアスクリーニングを含めた緩和ケア研究として,4地域を対象とした地域介入による前後比較研究であるOPTIM-study3)が行われた.OPTIM-studyでは「生活のしやすさに関する質問票」をスクリーニングツールとして使用し,患者の身体症状,精神症状,心理・社会的なニードが包括的に評価された.その結果導入効果として多職種チームがかかわれるきっかけになるとの意見の一方で,運用が難しく工夫が必要である,ツールを利用する時間や人員がいないとの意見がみられた4).2015年に実施された苦痛のスクリーニングの実態調査5)では,379施設でスクリーニングの導入を行っていたが,入院・外来両方ともに実施している施設は67%だった.また,外来のすべての部署でスクリーニングを実施していたのは10%と低率だった5).この実態調査から日本ではがん患者に対する苦痛のスクリーニングはいまだ黎明期の段階で,入院患者より外来患者の実施および対応が難しいことが予想される.有症状患者に対するスクリーニングは実施するのみでは患者の症状改善にはつながらないことはすでに報告されており68),スクリーニング結果の記録およびリソースの分析,症状改善の有無まで含めた結果分析まで実施して初めて有用か否か判定が可能となる9).そのため苦痛のスクリーニングを導入しても,苦痛への対応は多岐にわたるため,対応を効率的に実施するには施設への負担が重いこと6,10)が指摘されている.緩和ケアにおける苦痛のスクリーニング導入効果に対する総説7)では,有用であったと結論した研究は42%のみであった.これまで苦痛のスクリーニングを導入した施設において症状の頻度の研究は散見される1113)が,症状に対処するために必要な人的資源すなわちリソースに関する分析評価についての研究報告はこれまでない.

本研究の目的は,外来がん化学療法患者の苦痛のスクリーニング後の症状改善のための対応に必要なリソースを明らかにすることで,効率的なスクリーニング体制構築における問題点を指摘し,スクリーニングから有用な緩和ケアの提供を行う条件を提示することである.

方法

研究対象

2015年4月から2017年3月までに新潟市民病院の外来化学療法室でがん化学療法が行われた患者のうち局所進行がんまたは再発がん症例を対象とした.

評価方法

全患者にthe Japanese version of the Support Team Assessment Schedule (STAS-J)症状版14)でスクリーニングを行なった.スクリーニングは局所進行がんまたは再発がんの患者に対して化学療法を初回に実施する時および薬剤の変更時に行われた.スクリーニングは外来化学療法室でがん性疼痛看護認定看護師およびがん薬物療法・緩和薬物療法認定薬剤師により聞き取り形式により行われた.STAS-J症状版14)では,以下の症状別にスコアで評価が行われる.すなわち,その症状は,疼痛,しびれ,全身倦怠感,呼吸困難,せき,たん,嘔気,嘔吐,腹満,口喝,食欲不振,便秘,下痢,尿閉,失禁,発熱,ねむけ,不眠,抑うつ,せん妄,不安,浮腫,その他の23項目である.STAS-J 症状版14)ではスコアは0〜4の5段階に分類され,0と1は介入不要の状態で,2以上が要介入と判定される(表1).本研究ではスコア2以上を苦痛ありと判定した.苦痛ありの患者は症状別に分類し,利用したリソースと対処を記載した.本研究開始前に,認定看護師・薬剤師,看護師全員にSTAS-J症状版のスコアリングの方法,運用方法について説明した.スクリーニング結果は,電子カルテの台帳に直ちに記載された.苦痛ありの場合は,電子カルテにその内容と対処が記載され,主治医等と情報が共有された.リソースとは,対応に必要であった職種や診療グループと定義され,苦痛改善に必要であった職種が記録された.疼痛,しびれ,全身倦怠感,呼吸困難,せき,たん,嘔気,嘔吐,腹満,口喝,食欲不振,便秘,下痢,尿閉,失禁,発熱,ねむけ,不眠,抑うつ,せん妄,不安,浮腫,その他の症状のうち不眠,抑うつ,せん妄,不安を「精神症状」,それ以外の症状を「身体症状」と2群に分類した.

スクリーニングで苦痛ありと診断された場合には以下の3種類の対応:「直接介入」,「主治医対応」,「その他リソースの対応」が行われた.「直接介入」とは,スクリーニングを行った認定看護師・薬剤師が直接患者に支援を行った場合で,患者に対する指導や傾聴および継続支援と定義され,他のリソースへ対応を依頼し対応した場合は含まないこととした.「主治医対応」とは薬剤調整,病状変化の説明および対応を行った場合,あるいは認定看護師・薬剤師が主治医に相談あるいは診療を依頼し主治医が対応した行為と定義され,他科の医師の診察依頼などは含まないこととした.「その他リソースの対応」とは「直接介入」と「主治医対応」を除いた対応とし,他科医師の対応,主治医・認定看護師・薬剤師以外のリソースが対応した場合,緩和ケアチームに依頼し対応した場合と定義した.緩和ケアチームで対応とは,主治医や認定看護師・薬剤師等の個人では解決困難で,緩和ケア内科医師,認定看護師・薬剤師,医療福祉相談員,臨床心理士がチームとして共同で対応した場合とした.各症状別に対応リソースを分析し,がん患者の症状別に対応症例数を記載した.対応はスクリーニング実施日に行われた.

表1 STAS-J症状版: グレード別症状

分析方法

統計学的解析にはR(Version 2.2, Vienna, Austria)を用いた.有意差検定はχ2検定が行われ,有意水準は5%とし両側検定を行った.

倫理的配慮

本研究は新潟市民病院臨床倫理部会の承認を得て行われた.

結果

2015年4月から2017年3月までに外来化学療法室でがん化学療法が行われた患者は1479例で,男性630例 女性849例,平均年齢62.3歳(22~93歳)だった(表2).外来化学療法患者で苦痛のスクリーニングを受ける以前に48例がすでに緩和ケア内科を紹介され受診していた.苦痛のスクリーニングは1479例に行われ,がんの種類別内訳を表2に示した.このうち苦痛ありと判断された症例は181例(12.2%)だった.その内訳を症状別にみると,23項目のうち15項目で苦痛ありが認められた(表3).認定看護師・薬剤師対応による「直接介入」は153件,「主治医対応」は98件,「その他リソースの対応」は37件だった.「その他リソースの対応」の37件はすべて認定看護師・薬剤師が主治医に対応を提案したもので,その対応内訳は,他科または緩和ケア科の医師への診察を提案し相談し対応した12件,緩和ケアチームに対応依頼した15件,医療福祉相談員に対応依頼した7件,医療心理士に対応依頼した2件,がん患者会1件だった(表3).

苦痛ありと評価された患者への対応で必要となったリソースは12職種またはチームで,認定看護師,認定薬剤師,主治医,眼科医師,歯科医師,皮膚科医師,整形外科医師,緩和ケア内科医師,緩和ケアチーム,医療福祉相談員,臨床心理士,がん患者会だった.スクリーニング後に一症状に対して複数の対応が必要となった場合があり,症状改善のために必要となった対応別延べ総数は表3に示した.有症状181例の対応延べリソース数は288件で,1例あたり平均1.6件のリソースが必要だった.有症状例の精神症状への対応は,認定看護師・薬剤師対応による「直接介入」(61件,39.9%)が「主治医対応」(10件,10.2%)より有意に高頻度だった(p<0.0001)(表4).有症状の身体症状への対応は,「主治医対応」(88件,89.8%)が認定看護師・薬剤師対応による「直接介入」(92件,60.1%)より有意に高頻度であった(p<0.0001)(表4).緩和ケアチームで対応は15件(5.2%)で,対応が必要だった症状の内訳は不安5件,疼痛4件,抑うつ2件,しびれ1件,嘔気1件,浮腫2件だった.

表2 対象症例の内訳
表3 スクリーニング後に症状改善のために必要となったリソース別延べ対応数
表4 身体症状と精神症状に対するリソース別症例数

考察

2015年4月からがん診療連携拠点病院では,外来・入院患者のがん患者に対して苦痛のスクリーニングが義務づけられた1).奥山ら5)は苦痛のスクリーニングの実態を把握する目的でがん診療拠点病院422施設に全国アンケート調査を実施し,回答施設の88%は苦痛のスクリーニングを導入しているとの結果だった.しかし,60%の施設でその後のフォローアップ体制が確立されておらず,また23%の施設はスクリーニング陽性患者に対応するシステムが整っていなかった5).スクリーニングのための人員が不足していること,医療者に時間がなく対応する体制を構築できないこと,有効な対応方法がみつからないことなどが原因として考えられる.そこで本研究は,スクリーニング後の対応に必要なリソースを明らかにすることで,効率的なスクリーニング体制構築における問題点を指摘し,緩和ケア提供の条件を提示することを目的とした.本研究の結果では,外来がん化学療法患者の苦痛の症状は15症状と多岐にわたっていた.その症状に対処するためのリソースは12職種またはチームが必要で,症状が複雑である場合は緩和ケアチームが対応した.リソースは多職種が必要となり,外来化学療法実施時に短時間で問題点を効率よく把握し苦痛のスクリーニングおよび対処と患者振り分けを迅速に行う必要がある.本研究の結果では,外来化学療法室で認定看護師・薬剤師がスクリーニングを実施し,患者に対する指導や傾聴および継続支援を直接行うことで苦痛を有する患者への「直接介入」が可能となった.また認定看護師・薬剤師が他職種へのコンサルトを主治医に提案することにより円滑で効率的な苦痛緩和に対する早期介入が可能となったと考えられた.リソースは多職種にわたり人材の確保も重要となる.さらに対応のためのリソースへ振り分ける人材はきわめて重要で,認定看護師・薬剤師などのがんの教育を受けた人材の育成が必須であると考えられた.

本研究では,認定看護師・薬剤師,外来・病棟看護師全員にSTAS-J症状版の運用とスコアリングの方法について説明し,対応結果は電子カルテに記載され,主治医と情報が共有された.緩和ケアに携わる多数の職員で苦痛のスクリーニングの運用を理解することは緩和ケアデリバリーの迅速性と情報共有の重要性を認識することにつながると考えられる.すなわち効率的な緩和ケア提供に必要な条件は,簡便で信頼性のあるスクリーニングツール,認定看護師・薬剤師などの適切なリソースに紹介できるがんの知識のある人材,緩和ケアに精通した多職種からなる豊富な人材,多職種間での情報共有が必要であると考えられる.OPTIM-study3)においても,スクリーニング導入効果として多職種チームがかかわれるきっかけになるとの意見の一方で,運用が難しく工夫が必要である,ツールを利用する時間や人員がいないとの意見がみられている.Mitchell15)は緩和ケアデリバリー構築においては人材育成とトレーニングがきわめて重要であると述べている.人材育成,システム運用の工夫,多職種での情報共有により緩和ケアデリバリーはより効率的に実施が可能であろう.

がん患者の身体的苦痛や精神的苦痛,社会的苦痛等のスクリーニングを診断時から行うこととされたが,具体的なスクリーニングツールは指定されなかった.スクリーニング使用に関する全国調査の結果5)では,生活のしやすさに関する質問票,独自ツール,STAS,つらさと支障の寒暖計の順に多く使用されていた.STAS-J症状版は多数の症状の苦痛の評価が可能であるため16),また簡便であるため,本研究ではスクリーニングのツールとして選択された.Newellら11)は外来で治療を受けている201人に苦痛の調査を行い,15の身体症状を認め,疲労・嘔気・食欲不振・嘔吐の順に多かったと報告した.他の研究12,17)も同様に疲労・嘔気・食欲不振・嘔吐が多く,STAS-J症状版はそれら苦痛が含まれており適切なツールであると判断し導入された.一方で,STAS-J症状版は身体・精神的苦痛の評価が主たる目的であるため社会的苦痛等が十分に拾い上げされない可能性がある.鈴木ら13)は,455例の新規外来化学療法を対象とし,延べ2854件の結果を分析した結果,医療相談:0.2%,在宅支援:0.4%のみと少数だったと報告した.当院ではがん患者相談室や医療福祉相談,さらに就職相談および斡旋まで提供されており,患者・家族の社会的苦痛には対応が十分なされていると判断した.外来化学療法では判定に迅速性が要求されるため,認定看護師・薬剤師が効率的に遂行可能であると考えスコアリング実施者とした.しかし,限られた人数の認定看護師・薬剤師によるスクリーニングは限界があり,患者の苦痛の早期発見には外来化学療法室の看護師の協力も考慮すべきである.リソースが乏しい状況下ではスコア記入者は外来化学療法室の看護師が行い,苦痛改善を要する患者対応者は認定看護師・薬剤師と役割分担することも考慮すべきであろう.

がんの苦痛のスクリーニングの有用性を調査した総説15)では,14の研究のうち有用性を見出せたのは6研究であったと報告している.スクリーニングを実施するのみでなく,症状対応改善までのプロセスの重要性と緩和ケアデリバリー構築をする人的,時間的余裕がないことも指摘している15).本研究でも苦痛ありの症例は181例,12.2%だったが,それに対して12職種のリソースが必要でさらに1症例に対し複数の職種が必要で,対応したリソース総数は288件だった.多くの専門家が苦痛の改善に必要となり,問題解決の困難さがうかがい知れる.しかし,それにもかかわらず苦痛に対するスクリーニングは推奨されており,その有効活用には現場のスタッフの教育が重要であるとしている15).本研究での外来化学療法患者で苦痛ありは12.2%で,一方Moritaら12)は苦痛ありが18%だったと報告した.苦痛ありが本研究より高頻度なのは対象症例が少ないための影響と考えられるが,口腔ケアの問題,不眠,方針決定の情報に関する不安が多かったと報告した.本研究ではもっとも多い症状は不安の49例で,疼痛の45例が2番目に多い症状であった(表3).対応方法でみると,不安,抑うつなどの精神症状は認定看護師・薬剤師による「直接介入」が「主治医対応」より有意に多く,一方,疼痛,しびれなどの身体症状は「主治医対応」が「直接介入」より有意に多かった(表4).不安,抑うつなどの精神症状は認定看護師や認定薬剤師が患者とコミュニケーションを行うことで症状改善が可能な場合があり,その結果「直接介入」が可能となり有意に多かったのであろう.外来という限られた時間では短時間での患者からの情報の収集が必要であり,がん化学療法患者に対する認定看護師と認定薬剤師によるスクリーニングは,その場での問題解決が可能となるのみならず,他の専門職への振り分けを行うという責務を担っている.精神的苦痛の評価には,「つらさと支障の寒暖計」18)やPHQ-9日本語版「こころとからだの質問票」19)の使用でうつ病や適応障害の診断には効率的で有用であることが報告されている.通常の苦痛のスクリーニングに加えて「つらさと支障の寒暖計」のスクリーニングを加えると精神疾患の発見率が上がることが報告20)されている.STAS-J症状版と精神疾患のスクリーニングツールの併用は,より正確な精神的苦痛の診断に有用となる可能性がある.

がん患者に対して,専門的緩和ケアが介入すべき適切な時期はいまだ明らかでない.Huiら21)は緩和ケア介入のタイミングは,がん薬物療法二次治療の効果がない時であるとし,予後の短い悪性腫瘍の場合は診断時からの緩和ケア介入が必要であると報告した.さらに施設ごとに緩和ケア提供体制やリソースが変わるために,医療提供体制の整備が必要であると述べている22).日本ではすべてのがん患者に緩和ケアが行われることとなった一方で,米国臨床腫瘍学会22)では2017年に,進行がん患者は積極的な抗がん治療と並行して早期の段階から多職種で構成された緩和ケアチームに紹介されるべきであるとした.すなわち日本ではがん患者すべてが対象であり,米国臨床腫瘍学会22)では進行がんのみを早期の緩和ケアの対象とした点が相違点である.本研究の対象患者は外来で化学療法を実施する患者であり,局所進行がんまたは再発がんが対象である.事前に緩和ケア内科に紹介されていた患者もおり,すでに苦痛緩和がなされていた可能性があり,本研究の苦痛のスクリーニング陽性率が低下したかもしれない.しかし,それにもかかわらず必要なリソースは12職種またはチームと多いため,外来での効率的な運用を構築しておく必要があると考えられた.苦痛のスクリーニングを有効に活用するには,スクリーニング実施者により各患者に必要なケアを選別し,リソースへ効率的にデリバリーすることが重要である.そのためにはがんの知識が豊富である認定看護師や認定薬剤師などの人材育成が重要で,それらの職種により迅速な患者の振り分けが可能となり,有効な緩和ケアデリバリーが行えると考えられた.

研究の限界

本研究は単一施設での研究で,症例分布に偏りがある可能性がある.またスクリーニング実施者が2人のみであり,実施者の特性が研究結果に影響した可能性がある.単一施設の研究であるため,リソースは当院にある設備や人員しか使用することができないことから,偏りが生じている可能性がある.

結論

本研究の結果では,外来でのがん化学療法患者に対する苦痛のスクリーニング陽性率は181例(12.2%)だった.有症状181例に対する延べ対応数は288件で,1例あたり平均1.6件のリソースが必要だった.苦痛のうち疼痛やしびれなどの身体症状は「主治医対応」が認定,看護師・薬剤師の「直接介入」より有意に多かった.一方,抑うつや不安などの精神症状は認定看護師・認定薬剤師による「直接介入」が「主治医対応」より有意に多かった.苦痛の緩和に必要となったリソースは12職種またはチームだった.がんの苦痛対応には多くのリソースが必要で,これらリソースへ提供を依頼する認定看護師や認定薬剤師の役割は,外来という限られた時間の中で円滑かつ迅速な緩和ケアデリバリーを行ううえで重要であると考えられた.

謝辞

本研究にご協力していただいた対象者の皆様,外来化学療法室のスタッフの皆様に感謝申し上げます.

また,本研究は,2017年,第55回日本癌治療学会学術会議(横浜)で発表した.

利益相反

著者の申告すべき利益相反なし

著者貢献

二宮,大谷は研究の構想およびデザイン,研究データの収集・分析・解釈,原稿の起草に貢献;田中,工藤,三富は研究データの収集・分析・解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献;佐藤,野本,伊藤,片柳は研究データの解釈,原稿の重要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.すべての著者は投稿論文ならびに出版原稿の最終確認および研究の説明責任に同意した.

References
 
© 2019日本緩和医療学会
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