2019 年 14 巻 4 号 p. 253-257
【緒言】緩和ケア病棟で診断した後天性血友病Aの事例を報告する.【症例】86歳男性.1年前に胃がんと診断されたが本人に治療の希望がなく経過観察されていた.経過中に全身の皮下出血が多発し,貧血も増悪したため入院.血液検査で活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長を認めたが原因は不明であった.入院後も皮下出血は持続し,疼痛を伴った.緩和ケア病棟に入院後,血液検査でAPTTのみが延長していたため凝血学的検査を行い,後天性血友病Aと診断した.免疫抑制療法を検討したが経過中に抗菌薬が無効の誤嚥性肺炎を合併し,予後は短いと予想されたため免疫抑制療法は行わなかった.緩和ケア病棟入院後20日目に死亡した.【結語】後天性血友病Aは稀な出血性疾患だが,既往歴や家族歴のない突然の出血とAPTTのみの延長が認められた場合には後天性血友病Aを疑うべきである.