2020 年 15 巻 2 号 p. 81-84
【緒言】妊婦のがん疼痛をフェンタニルで緩和した2症例を経験した.【症例1】30歳女性,多発性骨髄腫による腰痛が妊娠30週ごろから増強した.妊娠34週1日からフェンタニル持続静注を開始し,32 µg/時まで漸増した.妊娠36週1日に選択的帝王切開術を行った.児に明らかな有害事象は認めなかった.【症例2】34歳女性,妊娠22週目に胃がんと診断され,第12胸椎の病的骨折も認めた.フェンタニル持続皮下注を開始し,24 µg/時まで漸増して痛みは改善した.化学療法を行いつつ妊娠を継続し,妊娠34週0日で選択的帝王切開術を行った.児は出生直後にチアノーゼを呈し気管挿管を行ったが,翌日には問題なく抜管できた.【結語】2症例ともフェンタニルを用いて鎮痛を行うことで妊娠継続が可能となり出産に至った.フェンタニルとの因果関係は不明だが,1症例でチアノーゼを認めた.