Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
15 巻, 2 号
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原著
  • 名古屋 祐子, 宮下 光令, 入江 亘, 余谷 暢之, 塩飽 仁
    2020 年 15 巻 2 号 p. 53-64
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/07
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    【目的】看護師による代理評価を用いて終末期にある小児がん患者のQuality of Life(QOL)とその関連要因を検証する.【方法】2015年10月〜2016年2月に国内の小児がん治療施設に勤務し,終末期にある小児がん患者を担当した看護師を対象とし,看護師によるQOL代理評価尺度(Good Death Inventory for Pediatrics: GDI-P)22項目とその関連要因を調査した.【結果】18施設から患者53名分の代理評価を得た.GDI-P8下位尺度のうち「からだや心の苦痛が緩和されていること」が最も平均が低かった.GDI-Pの総得点は,ケアの構造・プロセスの評価と正の相関がみられ(r=0.58),死亡場所は症例数に偏りがあったが集中治療室の場合は自宅や病棟より得点が低かった.【結論】苦痛緩和が最優先課題であるとともに,ケアの構造・プロセスの評価がQOLと関連している可能性が示唆された.

  • 稲野 利美, 山口 貞子, 千歳 はるか, 梅沢 亜由子, 長橋 拓, 岡垣 雅美, 青山 高, 森 直治, 東口 髙志, 大前 勝弘, 盛 ...
    2020 年 15 巻 2 号 p. 71-80
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/21
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    電子付録

    【目的】本研究の目的は,進行がんを有する高齢者に対する集学的介入(NEXTAC-ONEプログラム)の栄養介入について詳細を示し,その忍容性を評価することである.【方法】初回化学療法を開始する70歳以上の進行非小細胞肺がんおよび膵がんを対象とし,8週間に3回の栄養介入を行った.標準的な栄養指導に加え,摂食に影響する症状,食に関する苦悩,食環境の問題への対処法を含めたカウンセリングを行い,分枝鎖アミノ酸含有の栄養補助食品を処方した.【結果】計30名の試験登録者のうち29名(96%)が予定されたすべての介入に参加し,遵守率については日記記載率90%,栄養補助食品摂取率99%であった.また治療期間中に栄養状態の悪化を認めなかった.【結論】悪液質リスクの高い高齢進行がん患者において,われわれの栄養介入プログラムは高い参加率と遵守率を有し,化学療法中の栄養状態の維持に寄与した可能性が示唆された.

  • 青木 美和, 南口 陽子, 畠山 明子, 師岡 友紀, 辰巳 有紀子, 中村 直俊, 荒尾 晴惠
    2020 年 15 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/30
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    【目的】外来化学療法中のがん患者が抱く家族への負担感の実態とその関連要因を明らかにした.【方法】がん診療連携拠点病院に通院中のがん患者を対象とした無記名自記式質問紙調査(n=1,981)より,外来化学療法患者(n=600)を抽出し,記述統計,単変量解析および多変量解析を行った.【結果】対象者の86.5%が家族への負担感を経験していた.多変量解析の結果,外来化学療法を受ける患者の家族への負担感の関連要因として身体的要因,社会的要因が明らかになった.身体的要因において,再発・転移があること,社会的要因において,40代以下,同居者あり,婚姻歴あり,仕事や経済面の悩み,家族や周囲の人との関わりに関する悩みが独立した関連要因であった.【考察】患者の家族への負担感の軽減のために,病状の進行に応じた心理的ケアおよび社会的背景に応じた支援の必要性が示唆された.

  • 橋詰 淳哉, 龍 恵美, 能勢 誠一, 宮永 圭, 岸川 礼子, 中村 忠博, 室 高広, 兒玉 幸修, 山下 春奈, 石井 浩二, 佐々木 ...
    2020 年 15 巻 2 号 p. 101-109
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/30
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    【目的】ナルデメジンは消化管のµオピオイド受容体に拮抗してオピオイド誘発性便秘(opioid-induced constipation: OIC)を改善するが,副作用として下痢が知られている.ナルデメジン導入後の下痢発現の予測因子についてオピオイド鎮痛薬投与期間に着目して解析した.【方法】2017年6月1日から2019年3月31日の期間に長崎大学病院においてナルデメジンをはじめて導入した患者を対象に後方視的調査を行った.【結果】調査対象は132名であり,下痢は33名(25.0%)に発現した.多変量ロジスティック回帰分析の結果,ナルデメジン導入前のオピオイド鎮痛薬投与日数8日以上は下痢発現と有意に関連した(オッズ比:3.76, 95%信頼区間:1.53-9.20, p=0.004).【考察】OICに対してナルデメジンを使用する場合,オピオイド開始後7日以内に使用することで,下痢の発現を回避できる可能性が示唆された.

  • 宇野 あかり
    2020 年 15 巻 2 号 p. 117-127
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/30
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    【目的】緩和ケア病棟で働くスタッフを対象に,緩和ケアで死に寄り添うことへの心理的適応過程を死のとらえ方と時間的展望に着目して明らかにする.【方法】緩和ケアスタッフ10名を対象に半構造化面接を実施し,TEM(複線径路・等至性モデル)を用いて分析した.【結果】スタッフは緩和ケアのキャリアの中で死のとらえ方を変化させ,死にpositiveな意味を見出すことで精神的健康を維持して働いていた.また,死が身近な環境は,過去・現在・未来への視点を広げ,適応的な時間的展望の形成を促し,よりよい生を送ろうという意識を高めることが推測された.【結論】今後はスタッフの死のとらえ方を把握しpositiveな意味づけを促す必要がある.また,緩和ケアに時間的展望の視点を取り入れることは,緩和ケアが自身の成長の糧になっているという気づきや,日々のケアの意識にもよい変化があると考えられ,有意義であるといえるだろう.

  • 伊藤 怜子, 清水 恵, 佐藤 一樹, 加藤 雅志, 藤澤 大介, 内藤 明美, 森田 達也, 宮下 光令
    2020 年 15 巻 2 号 p. 135-146
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/11
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    電子付録

    厚生労働省の受療行動調査におけるQuality of life (QOL)を評価する項目について,全国から無作為抽出した20〜79歳の一般市民2400名に対して郵送法による自記式質問紙調査を実施することにより,その国民標準値を作成することを目的とした.さらに,SF-8TM, Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9), Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status(ECOG-PS), Memorial Symptom Assessment Scale(MSAS)などとの関連も検討した.分析対象は978部(41.1%)で,性年齢階級別人口統計によって重み付けした40歳以上のQOL指標の標準値は,「体の苦痛がある」33%,「痛みがある」33%,「気持ちがつらい」23%,「歩くのが大変」15%,「介助が必要」3%であった.本研究結果は,今後,受療行動調査を用いて全国的かつ継続的に患者の療養生活の質を評価し解釈していくにあたり,重要な基礎データとなる.

  • 横井 弓枝, 玉木 朋子, 犬丸 杏里, 藤井 誠, 辻川 真弓
    2020 年 15 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/23
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    【目的】終末期ケアシミュレーションへの参加がレジリエンスに与える影響を評価した.【方法】参加学生61名を無作為に2群に割り付け,教育群に終末期ケアシミュレーションを実施した.ベースラインと教育終了後時点の両群のレジリエンスを測定した.【結果】ベースラインは両群に有意な差はなかったが,教育終了後時点は総合得点,I am・I have・I will/do因子得点が対照群よりも教育群で有意に高かった.教育群では総合得点,I am・I have・I will/do因子得点が,対照群ではI am因子得点のみがベースラインよりも教育終了後時点で有意に高かった.【結論】終末期ケアシミュレーションへの参加が,レジリエンス,とくに他者との信頼関係を築きネットワークを広げる力,自分自身で目標を定めそれに向かって伸びていく力を高める.

短報
症例報告
  • 上原 優子, 松本 禎久, 三浦 智史, 小林 直子, 五十嵐 隆志, 吉野 名穂子
    2020 年 15 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/21
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    【緒言】難治性がん疼痛に対して,入院環境下で先行オピオイドを減量せずメサドンを上乗せし,効果と副作用を確認しながら薬剤調整を行うことで,痛みの増強なく安全にオピオイドスイッチングが可能であった症例を経験した.【症例】38歳男性.胃食道接合部がんの大動脈周囲リンパ節転移による心窩部痛と背部痛にモルヒネが不応であったため,メサドンを上乗せして開始した.効果と副作用を確認しながら先行オピオイドを漸減・中止し,痛みの増強なくメサドンへの完全なスイッチングが可能であった.【考察】メサドンへのスイッチングには複数の方法があり,本邦ではstop and go (SAG)が推奨されているが,一時的な痛みの増強が問題となる可能性がある.入院環境下でのモニタリングのもとであれば,一時的な痛みの増強を回避するために,先行オピオイドにメサドンを上乗せしてスイッチングを開始する方法は考慮し得ると考えられる.

  • 鳥崎 哲平, 吉武 淳, 木永 舞, 山本 達郎
    2020 年 15 巻 2 号 p. 81-84
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/26
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    【緒言】妊婦のがん疼痛をフェンタニルで緩和した2症例を経験した.【症例1】30歳女性,多発性骨髄腫による腰痛が妊娠30週ごろから増強した.妊娠34週1日からフェンタニル持続静注を開始し,32 µg/時まで漸増した.妊娠36週1日に選択的帝王切開術を行った.児に明らかな有害事象は認めなかった.【症例2】34歳女性,妊娠22週目に胃がんと診断され,第12胸椎の病的骨折も認めた.フェンタニル持続皮下注を開始し,24 µg/時まで漸増して痛みは改善した.化学療法を行いつつ妊娠を継続し,妊娠34週0日で選択的帝王切開術を行った.児は出生直後にチアノーゼを呈し気管挿管を行ったが,翌日には問題なく抜管できた.【結語】2症例ともフェンタニルを用いて鎮痛を行うことで妊娠継続が可能となり出産に至った.フェンタニルとの因果関係は不明だが,1症例でチアノーゼを認めた.

  • 内藤 大輔, 若山 文規, 静川 裕彦, 中野渡 正行, 飯田 道夫, 福原 敬
    2020 年 15 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/26
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    Stiff-person syndrome(SPS)は,特徴的な筋硬直および有痛性痙攣により進行性に四肢軀幹筋の運動障害を引き起こす極めて稀な疾患であり,診断に苦慮することがある.SPSでは抗GAD抗体や抗amphiphysin抗体などの自己抗体が証明される場合があり,これらの抗体による中枢神経系でのGABA作動性ニューロンの障害が推測されている.今回われわれは,進行期乳がん患者に発症した傍腫瘍性SPSの症例を経験したので報告する.【症例】患者は52歳の女性で,両側肺転移,両側がん性胸膜炎,肝転移,がん性腹膜炎,両側卵巣転移を伴う進行期乳がんと診断された.全身状態不良のため抗がん治療の適応はなく,緩和ケア病棟入院にて酸素投与や胸腹水ドレナージを行ったが,嚥下障害に始まり筋硬直による上肢の運動障害や歩行障害が急速に進行し,脳神経内科にて傍腫瘍性SPSと診断された.ジアゼパム投与で若干効果が認められたが,傾眠となり投与量調整に難渋した.

  • 大音 三枝子, 薩摩 由香里, 梅田 節子, 新城 拓也, 西本 哲郎, 池末 裕明, 室井 延之, 橋田 亨
    2020 年 15 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/11
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    がん疼痛に対して,ヒドロモルフォン注射剤から投与を開始し鎮痛効果を評価した研究は少なく,注射剤と経口剤の換算比を検討した研究もほとんどない.そこで,中等度から高度のがん疼痛を有する患者において,ヒドロモルフォン注射剤から経口剤に変更する際の換算比の検討を目的とし,症例集積調査を行った.2018年7月から2019年12月に,ヒドロモルフォン注射剤から経口剤へ変更した入院がん患者を対象とし,1:5の換算比で変更した後の鎮痛効果と副作用の発現状況を調査した.対象患者6例のうち3例では適切な鎮痛効果が得られたが,1例で鎮痛効果が不十分で増量を要し,2例で有害事象の眠気が出現し減量を要した.この結果より,ヒドロモルフォン注射剤から経口剤に変更するときは,症例ごとに変更後の鎮痛効果と有害事象を慎重に観察し,投与量を調節する必要性が示唆された.

  • 寺本 晃治, 林 駒紀, 長谷川 千晶, 森井 博朗, 木村 由梨, 服部 聖子, 森田 幸代, 住本 秀敏, 寺村 和也, 醍醐 弥太郎
    2020 年 15 巻 2 号 p. 161-166
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/06/23
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    【緒言】腫瘍崩壊症候群(Tumor lysis syndrome: TLS)は,腫瘍細胞の崩壊に起因して発症する代謝異常症であるが,TLSが原因となってオピオイドによる呼吸抑制が出現した症例を経験した.【症例】患者は39歳の男性.菌状息肉症に対して化学療法(DeVIC療法)が開始された2時間後,尿量が減少し,血液検査結果と臨床経過からTLSと診断された.また,皮膚病変部の疼痛に対してオキシコドンが投与されていたが,TLSの発症に伴って呼吸回数の減少,傾眠,縮瞳などオキシコドンに起因する症状が出現した.これらは,オキシコドンの減量,拮抗薬の投与,TLSに対する治療により回復した.【考察】TLSの腎機能障害によりオキシコドンの排泄が遷延したことが,これらの症状の原因と考えられた.化学療法中のオピオイド投与は,TLSの発症によりオピオイドの効果が増強する可能性があることを念頭に置く必要がある.

活動報告
  • 坂下 美彦, 長島 律子, 藤里 正視
    2020 年 15 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/30
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    【緒言】スピリチュアルケアは緩和ケアの課題の一つであるが,構造化された介入法は限られている.スピリチュアルケアのためにディグニティセラピー(DT)の要素を取り入れたディグニティ個別音楽療法プログラム(DMT)を独自に開発したので報告する.【プログラム】DTの経験などをもとに,音楽療法士を含めた研究グループで開発した.【手順】最初に「あなたが人生で最も生き生きとしていたのはいつごろですか? そのころを思い出させてくれる曲は何かありますか?」などの質問をもとに患者が大切な曲を選ぶ.次にその曲を病室で音楽療法士が電子ピアノ演奏する(個別音楽会).演奏後に患者が思いや人生のエピソードなどを自由に語れるように促す.【考察】DMTを実施した患者からは大変好評を得ている.構造化されたプログラムであるため,いろいろな所で実施できる可能性がある.スピリチュアルケアとしての有用性および実施可能性を調査予定である.

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