2020 年 15 巻 3 号 p. 239-243
フェンタニルバッカル錠は上顎臼歯の歯茎と頰の間で保持することにより効果を発現する薬であるが,上顎臼歯の欠損などにより保持できない患者も認められる.フェンタニルバッカル錠を上顎臼歯の歯茎と頰の間以外で使用した患者7例を対象に後方視的にカルテ調査を行った.タイトレーションが完了した症例を対象にそれぞれ5回の突出痛に対してNRSの平均の変化ならびに33%NRS軽減の割合を調査した.タイトレーションが完了したのは7例中5例であった.5例のそれぞれ5回分の突出痛に対してフェンタニルバッカル錠を使用した結果,NRSは4.8±2.4から1.5±1.5と有意に低下した(p<0.001).また,33%NRS軽減の割合は92.0%であった.有害事象は傾眠と悪心であったが軽度であり中止には至らなかった.フェンタニルバッカル錠を上顎臼歯の歯茎と頰の間以外で使用しても有効かつ安全に使用できる可能性が示唆された.