Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
15 巻, 3 号
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原著
  • 添田 遼, 三橋 麻菜, 岡野 清音, 横澤 愛子, 奥津 輝男, 辻󠄀 哲也
    2020 年 15 巻 3 号 p. 167-174
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/09
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    【目的】機能的自立度評価法(FIM)を使用し,死亡前6週のがん患者のADLの項目別の推移を検討すること.【方法】研究デザインは後方視的観察研究である.鶴巻温泉病院 緩和ケア病棟を死亡退院した18歳以上のがん患者55名を対象とし,FIMデータは診療録等から死亡直前(0週)から遡って6週間分を収集した.【結果】FIM合計点は死亡前6週55点から0週25点へ低下した.運動項目では食事・整容・排尿管理,認知項目では社会的交流・表出が死亡直前まで他の項目よりも自立度の高い項目であった.【考察】ADLへの支援は,死亡前2週までは,徐々に低下するベッド外での動作を安全かつ安楽に行えるように支援を行い,ベッド上での動作は死亡直前まで自立を続けられるように支援を行うことが望ましいと考える.

  • 河村 諒, 中里 和弘
    2020 年 15 巻 3 号 p. 175-183
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/15
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    電子付録

    【目的】介護職員の視点から,高齢者施設の宗教的な関わりの要素および宗教的な関わりが利用者,施設職員,利用者家族に及ぼす影響を整理し,宗教的な関わりの臨床的意義と課題を探索的に検討することを目的とした.【方法】特別養護老人ホームの介護職員12名を対象に質問紙調査および半構造化面接を行った.【結果】利用者では「非日常性」等の8つの要素が「日常場面におけるポジティブな精神的変化」等の5つの影響を,介護職員では「宗教の意識化」等の2つの要素が「自身の宗教観の変化」等の2つの影響を,利用者家族では「利用者を見送る行為の具現化」の要素が「利用者家族の精神的ケアの場」の影響をもたらすと考えられた.【結論】宗教的な関わりが利用者だけでなく施設職員や利用者家族にも有益である可能性が示唆された.

  • 中島 元美, 升谷 英子, 荒尾 晴惠
    2020 年 15 巻 3 号 p. 185-198
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/21
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    【目的】不可逆的悪液質のケアに対して緩和ケア病棟看護師が抱く困難の実態とその関連要因を明らかにする.【方法】緩和ケア病棟看護師に無記名自記式質問紙調査を実施し,郵送にて回収した.分析は因子分析,重回帰分析を用いた.【結果】169名を分析対象とした.不可逆的悪液質のケアに対する困難は,6因子が抽出された.[衰えや死に直面した患者や家族の無力感や葛藤への対応]の困難の得点が最も高く,この困難が高いと他5因子の困難も高い傾向にあった.[不可逆的悪液質のケアを行うためのアセスメントや判断]は,配属年数や関わる程度,学習機会で困難の程度が異なった.[看護師自身のセルフケア]は,配属年数が3年以上で困難が低下する傾向にあった.【結論】不可逆的悪液質のケアに対する困難として6因子が示され,患者や家族との思慮深い対話や看護師への教育支援の必要性が示唆された.

  • 工藤 さゆり, 冨野 江里子, 松尾 直樹
    2020 年 15 巻 3 号 p. 205-212
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/28
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    本研究の目的は,患者の鎮静の意思決定に関わる看護師の認識を明らかにすることである.ホスピスに勤務する看護師6名を対象に半構成面接を行い,質的記述的研究法を行った.看護師の認識として[意思決定に関わる困難感],[患者の意思を重視する態度],[意思決定に関わるための対処行動]を抽出した.看護師は患者に死を意識させる懸念に関連する困難感を抱えており,看護師が抱える負担は大きく,鎮静の説明や意思確認は容易ではないことが示唆された.一方,看護師の倫理観に基づく判断など患者の意思を重視する態度も見られた.患者の鎮静の意思決定に関わる看護師の心理的支援として,多職種での話し合いの必要性が挙げられた.また教育的示唆として,経験の必要性が挙げられ,鎮静の意思決定に関わるロールプレイなどの体験を通した教育が必要である.

  • 山田 正実, 松村 千佳子, 地丸 裕美, 上野 理恵, 鳥井 小莉, 高橋 一栄, 矢野 義孝
    2020 年 15 巻 3 号 p. 213-220
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/03
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    オピオイド誘発性悪心・嘔吐(OINV)に対する予防的制吐薬の有用性はエビデンスが少なく,日本緩和医療学会ガイドラインでも必須ではないが,OINVを含むオピオイド鎮痛薬導入時の副作用の予防は,適切な疼痛マネジメントとアドヒアランス向上の重要な課題である.従ってOINVに影響を与える因子の探索と軽減させる手段の検討は有用である.カルテ調査の結果,悪心は,女性,予防的制吐薬,化学療法,ステロイド薬,嘔吐は女性,放射線が有意な因子となった.とくに女性においてオピオイド導入日に化学療法の制吐薬を併用して化学療法を実施した群は,化学療法を実施していない群,化学療法を実施したがオピオイド導入日に化学療法の制吐薬を併用しなかった群に比べ有意に悪心発症の頻度が低かった.OINVが懸念される女性において,化学療法の制吐薬を併用したうえで同日に化学療法を実施することはOINVを予防する一つの方策になり得ると考える.

  • 鹿角 昌平, 木下 貴司, 松村 真生子
    2020 年 15 巻 3 号 p. 251-258
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/28
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    【目的】アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning: ACP)に関する病院職員の意識と実践として,ACPの認知度,終末期医療に関する家庭内での話し合いや文書化の状況等を調査し,今後重点的に介入すべき点を把握して緩和医療の質的向上に資する.【方法】病院職員782名を対象として無記名自記式調査票により調査した.【結果】「家族や自分の終末期医療に関する希望について,家庭内で話し合ったこと」が「ある」のは146名(27.7%),「家族や自分が意思表示できなくなった場合の代理意思決定者について,家庭内で話し合ったこと」が「ある」のは58名(11.0%)と限られていた.それらの内容を文書化していたのは6名(1.1%)であり,話し合いの結果はほとんど書面として残されていなかった.【結論】ACPに関する病院職員の意識と実践は未だ発展途上であり,よりよい緩和医療を提供するうえで,職員自身もさらに知識理解や経験を深めていく必要性が明らかとなった.

短報
  • 赤川 祐子, 眞壁 幸子, 伊藤 登茂子, 今野 麻衣子, 三浦 京子, 白川 秀子, 安藤 秀明
    2020 年 15 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/07
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    【目的】がんになった親をもつ子どもへの支援に対する看護師の現状を明らかにする.【方法】平成28年12月~平成29年2月,秋田県内のがん看護に関わる看護師を対象に支援の認識や経験,学習背景等を質問紙調査した.属性は記述統計,支援経験と属性の関連はχ2検定,Fisherの正確確率検定等を用い(p<0.05),自由記載は類似内容でカテゴリ分類をした.【結果】10施設141名(回収率:43.9%)のうち,支援が必要と思う者は135名(96%),支援経験者は28名(20%)であった.支援内容は[子どもへの直接的支援][親を介した支援][リソースへの連携調整による支援],支援上の困難は「子どもへの介入」が最多で,「子どもと会えない」も挙がった.【結論】子どもへの支援経験者は少数のため,具体的な支援方法を学び,他職種との情報共有をすることで支援の充実を図り,子どもに会えない場合には親を通した支援が必要である.

  • 武井 大輔, 松坂 和正, 余宮 きのみ, 中村 益美
    2020 年 15 巻 3 号 p. 239-243
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/16
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    フェンタニルバッカル錠は上顎臼歯の歯茎と頰の間で保持することにより効果を発現する薬であるが,上顎臼歯の欠損などにより保持できない患者も認められる.フェンタニルバッカル錠を上顎臼歯の歯茎と頰の間以外で使用した患者7例を対象に後方視的にカルテ調査を行った.タイトレーションが完了した症例を対象にそれぞれ5回の突出痛に対してNRSの平均の変化ならびに33%NRS軽減の割合を調査した.タイトレーションが完了したのは7例中5例であった.5例のそれぞれ5回分の突出痛に対してフェンタニルバッカル錠を使用した結果,NRSは4.8±2.4から1.5±1.5と有意に低下した(p<0.001).また,33%NRS軽減の割合は92.0%であった.有害事象は傾眠と悪心であったが軽度であり中止には至らなかった.フェンタニルバッカル錠を上顎臼歯の歯茎と頰の間以外で使用しても有効かつ安全に使用できる可能性が示唆された.

症例報告
  • 木原 里香, 山添 有美, 浅井 泰行, 足立 佳也, 桒原 恭子, 藤野 雅彦, 佐部利 了, 小田切 拓也, 綿本 浩一, 渡邊 紘章
    2020 年 15 巻 3 号 p. 199-204
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/07/21
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    電子付録

    【緒言】血管内大細胞型B細胞リンパ腫が疑われた患者が過活動型せん妄を呈し,ステロイド投与が過活動型せん妄に有効であった1例を経験したので報告する.【症例】67歳男性.発熱と貧血,高LDH血症を認め,精査中に,過活動型せん妄をきたした.抗精神病薬のみでは症状緩和が困難であった.血管内大細胞型B細胞リンパ腫による微小血管閉塞がせん妄の直接因子となっていることが強く疑われたため,骨髄検査と皮膚生検を施行したうえで,プレドニゾロンを増量したところ,速やかに症状が改善した.【考察】血管内大細胞型B細胞リンパ腫の症例においては,微小血管梗塞や中枢神経病変といった原病によるせん妄に対し,ステロイド投与が症状緩和に寄与する可能性がある.

  • 矢萩 裕一
    2020 年 15 巻 3 号 p. 227-231
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/07
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    【緒言】リンパ系腫瘍では,ステロイド治療は症状緩和に加えて抗腫瘍効果も期待できる.生命予後3週間以下と見込まれた終末期リンパ系腫瘍症例ながら,ステロイドの緩和治療効果と抗腫瘍効果により,在宅療養・通院治療が可能となった2症例を報告する.【症例1】55歳女性.腸管症関連T細胞リンパ腫の患者.再発時に高ビリルビン血症とPS悪化を認めた.症状緩和目的のステロイド治療はそれのみならず抗腫瘍効果も発揮し,3カ月間の在宅療養が可能となった.【症例2】63歳男性.ATLL急性型の患者.VCAP療法を中心に化学療法を施行したが,再発再燃を繰り返したため,症状緩和目的でステロイド治療を行った.ステロイドは抗腫瘍効果も発揮し,8カ月にわたる在宅療養が可能となった.【結語】終末期リンパ系腫瘍患者において,ステロイド治療は症状緩和と抗腫瘍効果の両方を視野に入れた,強力な選択肢になり得ると考えられた.

  • 福岡 奈津子, 辻 晃仁, 山上 佳樹, 西村 英樹, 中條 浩介, 村上 あきつ, 山本 哲司
    2020 年 15 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/31
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    【背景】悪性骨軟部腫瘍肺転移の終末期には,腫瘍増大や癌性リンパ管症による呼吸困難に対する症状緩和が必要となる場合が多い.緩和医療として経鼻的持続陽圧呼吸(以下,nasal CPAP)が有効であった症例を経験したので報告する.【症例】66歳男性.左大腿軟部肉腫の診断のもと広範切除術を施行.術後経過観察中,肺門部リンパ節転移,多発骨転移,および癌性リンパ管症をきたし,呼吸状態増悪のため入院となった.呼吸困難に対しnasal CPAPを開始することで症状改善が得られ,亡くなる直前まで会話などの意思疎通が可能であった.【考察】終末期の呼吸器症状に対しては,多くの場合モルヒネやステロイド薬の使用といった薬物療法で症状緩和を目指すことが多いものの,十分な症状改善が得られないことも多い.nasal CPAPは非侵襲的で着脱も可能であることから本症例のような一般的な薬物療法にて改善が得られない呼吸困難に対して有用な可能性がある.

活動報告
  • 宮森 正, 服部 ゆかり, 石黒 浩史
    2020 年 15 巻 3 号 p. 245-249
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/16
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    【緒言】川崎市立井田病院緩和ケア病棟(以下,当PCU)では,Integrated Distress Activity Score(IDAS)で患者の症状緩和を評価しているが,持続的深い鎮静(continuous deep sedation)を行うにあたり,IDASゼロ以下とする判断方法を考案し,今回,持続的深い鎮静例5年分を後ろ向きに抽出し検討した.【方法】正規看護師が IDASにより評価を連日行い,われわれは適合例を調査した.【結果】2013年から2017年の1306件の入院中に,この判断方法による持続的深い鎮静は1.2%,16件であった.理由は,呼吸困難62.5%,10件とせん妄37.5%,6件であった.全例,直近にIDASが低下しゼロ以下となったが,この時点から持続的深い鎮静までの期間は平均3.7日であった.IDASが持続的深い鎮静の実施判断に有用なツールとなる可能性がある.

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