2025 年 20 巻 1 号 p. 49-55
背景:がん患者の家族は,患者の介護,通院の支援,社会的活動の補助など身体的,精神的,経済的負担がかかっているにもかかわらず,その生活の質(quality of life: QOL)に関する研究は進んでいない.目的:がん化学療法を受ける患者の家族のQOLを測定し患者の治療経過との関連性について検討する.方法:2016–2024年に当科で化学療法を施行した切除不能・再発固形がん症例の1次治療前と2次治療前のEORTC-QLQ-C30を用いて測定した患者と家族のQOLを治療の期間および治療効果を後方視的に比較検討した.結果:45例が抽出され,家族は治療前後とも倦怠感,疼痛,睡眠障害,経済的困難感を多くが訴えており,情緒機能と認知機能が患者と同等に低下していて,その後も回復がなく治療早期では社会機能が低下していた.治療効果は家族のQOLに影響がなかった.考察:自己記入式調査票によるがん患者の家族のQOL調査により,一貫した家族の精神的支援と,治療早期の社会的支援の必要性が判明した.