2025 年 20 巻 1 号 p. 23-27
【緒言】頭頸部悪性腫瘍は稀に頸動脈洞症候群を合併するが,がん終末期の頸動脈洞症候群では効果的な治療がないことが多い.われわれは病態説明や生活指導を行い,失神発作を減少させた症例を経験した.【症例】73歳男性,中咽頭がん,両側頸部多発リンパ節転移.頸動脈洞症候群によりめまいや失神を生じた.緩和医療科の外来に紹介され,患者と妻に病態説明と誘発因子の回避,前駆症状出現時の失神回避法などの生活指導を行った.その後に失神の頻度が減少し日課の散歩を再開できていた.しかし介入から7カ月後には誘発因子なく失神が出現するようになった.自宅療養していたが体動困難のため入院し翌日永眠した.【考察】誘発因子や前駆症状を伴う失神であったため,病態説明や生活指導は有効であった.生活指導などの介入は患者のquality of lifeの向上や自宅での療養継続につながった.