【目的】切除不能大腸がんによる悪性大腸閉塞に対する大腸ステント留置術の有用性を予後予測指標により層別化して評価した.【方法】単施設後ろ向き観察研究として,2017年1月から2023年12月までに大腸ステント留置術を施行した32例を解析した.主要評価項目は経口摂取再開の可否とし,副次評価項目は大腸閉塞スコア(colorectal obstruction scoring system: CROSS)の改善,CROSS 4達成の可否,退院,有害事象および予後への影響とした.【結果】経口摂取再開は31例(96.9%)で達成された.CROSSは全例で改善し,23例(71.9%)で退院可能であった.早期有害事象は認めず,晩期閉塞2例は追加介入により対応可能であった.予後短縮を示す症例は認めなかった.【結論】大腸ステント留置術は有効性と安全性を有し,予後層別にかかわらず初期介入有用な選択肢となり得ることが示唆された.
Objective: To evaluate whether palliative colorectal stenting can serve as an effective initial intervention for malignant colonic obstruction in patients with unresectable colorectal cancer, stratified by prognostic indicators. Methods: In this single-center retrospective study, 32 patients who underwent palliative colorectal stenting between January 2017 and December 2023 were analyzed. The primary outcome was the resumption of oral intake. Secondary outcomes included improvement in the colorectal obstruction scoring system (CROSS), discharge status, adverse events, and potential impact on survival. Results: Oral intake was successfully resumed in 31 patients (96.9%). CROSS scores improved by at least one grade in all patients, and 30 patients (93.8%) achieved CROSS 4. Twenty-three patients (71.9%) were discharged. No early adverse events were observed. Two cases of late stent obstruction were successfully managed with additional interventions. Despite including patients with poor prognostic factors such as dementia and ascites, no patients died earlier than predicted by prognostic models. Conclusion: Palliative colorectal stenting demonstrated high efficacy and acceptable safety, and may serve as a useful initial intervention regardless of prognostic stratification.
大腸がんは進行に伴い悪性大腸閉塞を来すことがあり,その頻度は10%~20%1)と報告されている.悪性大腸閉塞は嘔気,嘔吐や腹痛といった腹部症状や摂食障害を引き起こし,患者の生活の質(quality of life: QOL)を著しく低下させるため,根治的切除が不可能な症例においても重要な臨床課題である.
切除不能大腸がんによる悪性大腸閉塞に対して,従来は姑息的切除術や人工肛門造設術といった外科治療が一般的に行われてきた.一方,自己拡張型金属ステントを用いた内視鏡的大腸ステント留置術は,2012年に保険収載されて以来,手術と比較して低侵襲に腸管減圧を得られる治療として普及している.国内外の報告1,2)では,症状緩和目的での大腸ステント留置術が人工肛門を回避できる可能性や,早期の経口摂取再開および退院が可能となるといった利点を有することが示されている.2020年の欧州消化器内視鏡学会(European Society of Gastrointestinal Endoscopy: ESGE)のガイドライン3)では,症状緩和目的の悪性大腸閉塞に対して,大腸ステント留置術が外科治療よりも優先すべき治療として強く推奨されている.一方,本邦の大腸がん治療ガイドライン4)では,症状緩和目的の症例に対して姑息的切除術,バイパス手術,人工肛門造設術といった外科治療を考慮し,外科治療が困難な場合に大腸ステント留置を選択肢とする位置づけがなされており,切除不能大腸がんによる悪性大腸閉塞に対して外科治療と大腸ステントをどのように選択すべきかについては明示されていない.
近年,大腸ステント留置術と人工肛門造設術を比較した研究5,6)により,大腸ステント留置術の有用性が示されてきたが,多くは治療法同士の比較にとどまっている.一方で,予後の異なる患者集団において,大腸ステント留置術を初期介入として位置づけた場合の臨床的意義については,明確ではない.
実臨床では,患者の全身状態や併存疾患に加え,予後の見込みを考慮して治療方針を検討する必要がある.予後が短いと判断された症例では外科治療を控え,予後が比較的見込まれる症例では外科治療を選択するといった,予後の長短による二分法的な意思決定が行われることが少なくない.しかし,予後予測には不確実性が伴い,また,全身状態や社会的背景,患者・家族の意向などの要因により,現実的には外科治療のみならず,大腸ステント留置術を含めた介入自体が控えられる症例も存在する.その結果,十分な症状緩和が得られないまま経過する症例も存在している.
このような背景において,予後の長短にかかわらず大腸ステントを「最初の介入」と位置づけることの臨床的意義は明らかではない.
そこで本研究は,切除不能大腸がんによる悪性大腸閉塞に対して症状緩和目的で大腸ステント留置術を施行した症例を予後予測指標により層別化し,本治療が初期介入として有用であるかを検討した.
単施設後ろ向き観察研究とした.
対象2017年1月から2023年12月までの間に当院で切除不能大腸がんによる悪性大腸閉塞に対し,症状緩和目的に大腸ステント留置術を施行した32例を対象とした.対象症例はいずれも大腸ステント安全留置のためのミニガイドライン(2021.11.16改訂)7)で大腸ステントの適応とされる病態であり,腹痛,腹部膨満,嘔気・嘔吐,排便障害などの腸閉塞症状を呈していた.同ガイドラインで禁忌/適応外とされる無症状例,消化管穿孔症例,内視鏡処置に全身状態が耐えられない症例は含まれなかった.いずれも症状出現後,緊急または準緊急での内視鏡的大腸ステント留置術を施行した.
なお,本研究の対象には,その後の治療として化学療法またはbest supportive care(BSC)が選択された症例を含み,根治切除可能と判断され,bridge to surgeryを目的として大腸ステント留置が選択された症例(対象期間中36例)は解析対象から除外した.
治療選択本研究では,消化管穿孔症例といった外科的緊急治療を要する症例,内視鏡治療困難な症例を除き,全例で大腸ステント留置術が初期介入として選択された.
本研究における「切除不能」は,遠隔転移や局所進行のみならず,年齢,全身状態,併存疾患,認知機能,患者・家族の意向などから総合的に根治切除困難と判断された実臨床上の概念として扱った.
評価項目本研究の主要評価項目は,経口摂取再開の可否とした.
副次評価項目として,大腸閉塞スコア(colorectal obstruction scoring system: CROSS,付録表1参照)8)の改善,CROSS 4到達の可否,退院の可否を評価した.
安全性評価項目として,早期および晩期の有害事象,晩期閉塞に対する追加介入の有無,ならびに予後への影響を評価した.
有効性の定義有効性は,症状緩和の達成度を評価した.
安全性は,処置に伴う有害事象および予後への影響の有無を評価した.
予後予測指標は,治療適応を決定する目的ではなく,ステント留置後の臨床経過を層別に評価するための補助的指標として用いた.
主解析ではPrognosis in Palliative care Study predictor model-B(PiPS-B)10)を用い,副次解析としてPalliative Prognostic Score(PaP Score)11)およびPalliative Prognostic Index(PPI)12)を用いた.
倫理的配慮本研究ではカルテ上から臨床情報を抽出し,個人が特定されることのない形で解析を行った.本研究は長野医療生活協同組合倫理委員会の承認を受け(承認番号:NCH23-21号),ヘルシンキ宣言に従い実施した.また,後ろ向き観察研究として,院内掲示および病院ウェブサイトによる情報公開を行い,研究対象者が研究参加を拒否できる機会を保障するオプトアウト方式で実施した.
統計解析各評価項目は記述統計を中心に解析した.留置前後のCROSSの変化についてはWilcoxon符号付順位検定を用いて評価した.その他の群間比較は探索的解析として行い,有意水準は5%とした.統計解析にはEZR(自治医科大学附属さいたま医療センター)を用いた13).
患者背景を表1に示す.平均年齢は81.7歳(範囲:60–97歳)で,男性15例,女性17例であった.Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status(ECOG-PS)は0が8例(25.0%),1が10例(31.3%),2が8例(25.0%),3が2例(6.3%),4が4例(12.5%)であり,認知症を併存する症例は11例(34.4%)であった.臨床病期はIV期が17例(53.1%)と最多であった.ステント留置後の治療方針はBSCが30例(93.8%)と主体であり,2例(6.3%)で化学療法が選択された.
| 年齢,平均値(範囲),歳 | 81.7(60–97) |
| 性別,男性,n(%) | 15(46.9) |
| ECOG Performance Status, n(%) | |
| 0 | 8(25.0) |
| 1 | 10(31.2) |
| 2 | 8(25.0) |
| 3 | 2(6.3) |
| 4 | 4(12.5) |
| 認知症併存症例,n(%) | 11(34.4) |
| 腹水併存症例,n(%) | 12(37.5) |
| 臨床病期,n(%) | |
| I | 0(0) |
| II | 2(6.3) |
| III | 13(40.6) |
| IV | 17(53.1) |
| PiPS-B,n(%) | |
| 55日以上 | 20(62.5) |
| 15–55日 | 8(25.0) |
| 予後14日以下 | 4(12.5) |
| PaP,n(%) | |
| Group A(0–5.5) | 21(65.6) |
| Group B(5.6–11) | 7(21.9) |
| Group C(11.1–17.5) | 4(12.5) |
| PPI,n(%) | |
| Group A(0–2) | 12(37.5) |
| Group B(2.1–4.0) | 13(40.6) |
| Group C(4.1–15) | 7(21.9) |
| 原発部位,n(%) | |
| 盲腸 | 1(3.1) |
| 上行結腸 | 7(21.9) |
| 横行結腸 | 3(9.4) |
| 下行結腸 | 2(6.3) |
| S状結腸 | 13(40.6) |
| 直腸 | 6(18.7) |
| ステント後治療方針,n(%) | |
| 化学療法 | 2(6.3) |
| BSC | 30(93.8) |
ECOG, Eastern Cooperative Oncology Group; PaP, Palliative Prognostic Score; PPI, Palliative Prognostic Index; PiPS-B, Prognosis in Palliative care Study predictor model-B; BSC, best supportive care
また,臨床病期II期やIII期の症例を含むが,これらの症例では高齢,全身状態,併存疾患,認知機能,患者・家族の意向などを踏まえ,根治手術の適応は乏しいと判断されていた.特に,II期の2例はいずれも認知症を有し,ストーマ管理や周術期管理が困難と判断され根治切除の対象とはならなかった.
有効性評価
| CROSS 1段階以上改善,n (%) | 32 (100) |
| CROSS 4到達,n (%) | 30 (93.8) |
| 経口摂取可能となった症例,n (%) | 31 (96.9) |
| 経口摂取開始までの日数,中央値(範囲),平均値 | 2 (1–15),7.6 |
| 退院可能となった症例,n (%) | 23 (71.9) |
| 退院までの日数,中央値(範囲),平均値 | 23 (1–75),25.8 |
CROSS, colorectal obstruction scoring system
| 留置前 | 留置後 | P値* | |
|---|---|---|---|
| CROSS 0,n (%) | 13 (40.6) | 0 (0) | |
| CROSS 1,n (%) | 2 (6.3) | 1 (3.1) | |
| CROSS 2,n (%) | 2 (6.3) | 1 (3.1) | |
| CROSS 3,n (%) | 15 (46.8) | 0 (0) | |
| CROSS 4,n (%) | 0 (0) | 30 (93.8) | |
| CROSS,中央値(範囲) | 2 (0–3) | 4 (1–4) | <0.001 |
*Wilcoxon符号付順位検定.CROSS, colorectal obstruction scoring system
| 手技成功,n (%) | 32 (100) |
| 早期有害事象,n (%) | 0 (0) |
| 晩期有害事象,n (%) | 2 (6.3) |
| 閉塞 | 2 (6.3) |
| 晩期閉塞に対する追加介入,n (%) | 2 (6.3) |
| 人工肛門造設術 | 2 (6.3) |
| PiPS-B予測 生存期間 |
n | CROSS 1段階 以上の改善, n (%) |
経口摂取再開, n (%) |
退院可能, n (%) |
晩期閉塞, n (%) |
実際の生存日数, 中央値(範囲), 平均値 |
予測より早期の 死亡,n (%) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 14日以下 | 4 | 4 (100) | 3 (75) | 1 (25.0) | 0 (0) | 16.5 (5–31), 17.3 | — |
| 15–55日 | 8 | 8 (100) | 8 (100) | 5 (62.5) | 0 (0) | 48.5 (21–57), 44.6 | 0 (0) |
| 56日以上 | 20 | 20 (100) | 20 (100) | 20 (100) | 2 (10.0) | 340.5 (63–2631), 500.2 | 0 (0) |
PiPS-B, Prognosis in Palliative care Study predictor model-B; CROSS, colorectal obstruction scoring system
PiPS-Bにより予測された生存期間は,14日以下4例,15–55日8例,56日以上20例であった(表5).経口摂取再開は14日以下群においても3例で可能であり,1例を除き達成された.15–55日群,56日以上群では全例で経口摂取可能となった.実際の生存期間中央値は,14日以下群で16.5日(範囲:5–31日),15–55日群で48.5日(21–57日),56日以上群で340.5日(63–2631日)であった.PiPS-Bで生存期間14日以下と予測された症例は,全例PaPおよびPPIにおいても最も予後不良の層に該当していた.全症例の一覧を付録表2に示す.
原発部位に基づく解析原発部位をS状結腸・直腸群と盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸群に分けて探索的追加解析を行ったところ,いずれの群でも高率に経口摂取再開およびCROSS 4到達が得られた(付録表3).経口摂取可能までの日数,退院までの日数は,S状結腸・直腸群の方でやや長い傾向を認めたが,明らかな差はみられなかった.原発部位によって大腸ステント留置術の技術的難易度や合併症プロファイルが異なる可能性は指摘されているが,開存性に関する知見は限定的であり,一定の見解は得られていない.本研究では探索的解析の範囲ではあるものの,S状結腸・直腸群とそれ以外の群で明らかな差は認めなかった.
本研究では,切除不能大腸がんによる悪性大腸閉塞に対して症状緩和目的で大腸ステント留置術を施行した症例を対象に,有効性および安全性を評価し,さらに予後予測指標を用いた層別解析を行った.特に,経口摂取再開は患者の生活機能およびQOLに直接的に関与する臨床的に重要な指標であるため,本研究の主要評価項目として設定した.その結果,本治療は経口摂取再開をはじめとする有効性指標において高い達成率を示し,重篤な有害事象は認めず,予後への明らかな悪影響を示唆する所見も認められなかった.
有効性に関する考察本研究の主要評価項目である経口摂取再開は96.9%で達成され,本治療の臨床的意義を最も端的に示す結果といえる.また,全例でCROSSの改善を認め,71.9%の症例で退院が可能であった.これらの結果は,大腸ステント留置術が腸管減圧にとどまらず,患者の生活機能の回復に寄与する治療であることを示している.特に,予後が短いと予測された症例においても経口摂取再開が得られた点は重要である.
既報1,2,5)では,症状緩和目的の大腸ステント留置術が人工肛門造設を回避しうる点や,早期の経口摂取再開を可能とする点が報告されているが,多くは外科治療との比較に主眼が置かれてきた.一方,本研究は,治療法間の比較ではなく,予後の長短にかかわらず大腸ステント留置術を初期介入として位置づけた場合の臨床的意義に着目した点に特徴がある.
安全性に関する考察安全性評価においては,穿孔,出血,ステント逸脱といった早期有害事象や処置関連死亡はいずれも認めなかった.晩期有害事象としてステント閉塞を2例(127日後,986日後)に認めたが,いずれも人工肛門造設による介入で対応可能であった.これらの結果は,大腸ステント留置術が高齢者や全身状態が不良な症例を含む集団においても概ね安全に施行可能であることを示唆している.
また,本研究では安全性評価の一部として予後への影響を検討し,予後予測指標で予測された生存期間と実際の生存期間を比較した.その結果,予測された生存期間を下回って死亡した症例は認められず,大腸ステント留置術が予後に明らかな悪影響を及ぼしたと示唆される症例は認めなかった.この結果は,緩和医療において侵襲的介入を行う際の判断に一定の示唆を与えるものと考える.
予後予測指標を用いた層別解析の意義本研究では,予後予測指標を治療適応の決定ではなく,治療後経過を層別に評価するための補助的指標として用いた.PiPS-Bによる層別解析では,予測された生存期間が短い群においても経口摂取再開やCROSSの改善が認められた.実際の生存期間中央値は,各群において予測期間と大きく乖離する傾向は認められなかった.
特に,予後が短いと予測された症例においても経口摂取が可能となり,退院に至った症例が認められた点は重要である.従来,このような症例では侵襲的治療を控える選択がなされることもあったが,本研究の結果は,短期予後が見込まれる症例においても大腸ステント留置術が症状緩和に寄与しうることを示唆している.
一時的であっても経口摂取や退院が可能となることは,患者および家族にとって重要な意味を持つと考えられる.この点は,緩和医療における治療選択肢を再考するうえで重要な知見である.
保存的治療との関係悪性大腸閉塞に対する保存的治療としては,絶食,輸液,経鼻胃管・イレウス管による減圧,制吐薬,オピオイド,鎮痙薬,ステロイド,酢酸オクトレオチドなどが用いられる4).一方で,これらの保存的治療のみで経口摂取再開や退院可能な状態に至ることは必ずしも容易ではない.本研究で高率に経口摂取再開やCROSS 4到達が得られたことは,大腸ステント留置術が機械的閉塞解除という点で独自の意義を有することを示唆する.
予後の長短に関わらない「初期介入としての大腸ステント留置術」の意義本研究にはStage IVに限らない症例も含まれており,病期のみでは予後や治療適応を一律に判断できない実臨床の状況が反映されている.予後予測は臨床判断の一助となる一方で,高齢や全身状態不良の症例では個々の経過にばらつきがあり,予後の見積もりには不確実性が伴う.
本研究の結果は,大腸ステント留置術を初期介入として行うことで,高率に症状緩和が得られる可能性を示している.さらに,その後の臨床経過に応じて追加治療を段階的に検討するという治療方針の妥当性を支持する結果が得られた.本研究では,晩期にステント閉塞を来し,人工肛門造設を要した症例も認めたが,これは初期介入としての大腸ステント留置術が不成功であったことを意味するものではなく,症状緩和を優先した後に追加治療を選択するという段階的に治療を選択する戦略の一部と捉えられる.このような段階的な治療方針は緩和医療の現場における意思決定や,患者・家族との情報共有を支えるうえで意義のあるアプローチと考えられる.
切除不能大腸がんによる悪性大腸閉塞に対する治療戦略本研究の結果から,切除不能大腸がんによる悪性大腸閉塞に対して,消化管穿孔や腹膜炎など外科的緊急治療を要する症例や内視鏡的治療困難症例を除き,大腸ステント留置術を初期介入として選択し,その後の臨床経過に応じて,化学療法,BSC,あるいは人工肛門造設を含む追加介入を段階的に選択するという治療方針(付録図1)は,少なくとも本研究集団において妥当であった可能性が示唆された.
研究の限界本研究にはいくつかの限界がある.第一に,単施設後ろ向き観察研究であり,症例数が限られている点である.第二に,外科治療や他の緩和的介入との直接比較を行っていないため,治療法間の優劣を論じることはできない点である.第三に,本研究は当院における「穿孔・腹膜炎や内視鏡治療困難例を除き,初期介入として大腸ステントを選択する」という治療方針を反映した後ろ向き研究であり,施設ごとの意思決定や選択バイアスの影響を受ける可能性がある点である.第四に,本研究で用いた予後予測指標自体に不確実性が含まれる点である.
今後は,多施設研究や前向き研究により,本研究で示された治療方針の妥当性を検証することが望まれる.
切除不能大腸がんによる悪性大腸閉塞に対する症状緩和目的の大腸ステント留置術は,高い有効性と許容可能な安全性を有することが示唆された.本研究により,初期介入としての大腸ステント留置術で症状を緩和し,その後の臨床経過に応じて段階的に追加治療を検討する治療方針の妥当性を支持する臨床的結果が得られた.予後予測指標は侵襲的治療を控える判断の根拠とするのではなく,治療後の経過を踏まえて方針を検討するための参考指標として用いることが重要である.
本研究に関連して開示すべき研究資金はない.
すべての著者に申告すべき利益相反なし
桑原,松村,寺島,中森,遠藤,小島は研究の構想およびデザイン,原稿の重要な知的内容に関する批判的推敲に貢献;桑原はデータ収集,解析,解釈,原稿の起草に貢献;すべての著者は最終原稿を確認し,投稿を承認した.