抄録
【背景】進行がん患者では疾患や治療に伴う精神的ストレスが大きく, 精神症状を早期発見し, 適切に介入してQOLを向上させることが重要となる. HADSは精神症状発現のスクリーニングとして使用されるが, がん化学療法患者を対象とした報告は少ない.【目的】がん化学療法患者における精神症状とHADSおよびHADS以外の因子との関連性を解析し, 精神症状診断のスクリーニング法としての有用性を検討する.【方法】当科で化学療法を行った入院患者50名を対象とし, 解析因子は病歴より抽出. 各因子の精神科医診断への影響は多重ロジスティック回帰により解析.【結果】HADSのカットオフ値を17点とした場合, 精神症状を抽出する感度73%, 特異度82%であった. HADSとの併用で診断精度向上に関わる因子として「再発がん」が示唆された.【結論】がん化学療法患者における精神症状発現のスクリーニングとしてHADSの有用性が示唆された. Palliat Care Res 2011; 6(2): 150-157