抄録
【目的】終末期がん患者は, 排泄動作の自立度低下に伴い, 精神的苦痛や自尊心低下を感じる. これらはQOL低下に直結するため, 身体的・精神的に排泄しやすい環境調整が求められる. 今回, 緩和ケアチームで取り組んだ排泄環境を考慮したケアについて報告する. 【症例】肺がん, 多発骨転移の診断を受けた60歳代女性. 入院時, 基本動作・歩行自立であったが, トイレにて転倒, 左上腕骨病的骨折受傷し, 予後的観点より保存療法を選択した. トイレ移動時の疼痛や骨折リスクが考えられたが, 患者は排泄に関して「トイレでしたい」と希望した. その意欲や自尊心に配慮し, 疼痛コントロールを図ったうえで移動と移乗・下衣操作訓練を実施した. また便座高などの物的環境や介護に携わる者の人的環境を整備し, チームで統一したケアを行った. 【結果】徐々に疼痛悪化しADL低下がみられたが, トイレやポータブルトイレでの排泄動作が鎮静直前まで可能であった.【結語】本症例より, QOLや患者の尊厳に直結する排泄ケアをチームで実践することが可能であることを経験した.