主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム
回次: 1
開催地: 東京都
開催日: 1983/01/23
p. 71-83
I はじめに
一群の胎児水腫のなかにはRh式の血液型不適合妊娠における胎児赤芽球症のように病因と病態とを結ぶ因果律が比較的よく解明されているものも含まれてはいるが,しかし,それとは別に,1943年にPotterによってIdiopathic hydropsの存在が指摘され1),本症の病因が一様ではないことが示唆されて以来,血液型不適合によらない,いわゆる非免疫性胎児水腫に対する幾多の検討が主として病理学的な見地より続けられてきた2),3),4),5)。一方,1970年代の超音波検査を中心とした胎児情報の集積によって新たに一過性胎児水腫が報告されるに及び6),7),8),本症の全貌の理解は一層混迷の度を深めた感がある。しかしながら,胎児水腫の全集合をSyndrome complexとみなすことにすれば本症は帰納法的な解析を前提とした胎児病の格好のモデルといえなくもない。
ここに本症を改めて検討する今日的な位置付けがある。
このような観点から本稿では筆者らがすでに発表している成績8),9),10)を基礎にその後の展開を加えて報告する。