主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム
回次: 1
開催地: 東京都
開催日: 1983/01/23
p. 67-70
I はじめに
かつては母体の腹壁から,わずか10cm程度の位置におりながら,まったくの秘密のヴェールに被われていた胎児も,医療機器と医療技術,とりわけ超音波断層診断装置とその扱い方の進歩により,極めて非侵襲的に,しかも手にとるように詳細な観察が可能となってきた。
これらの進歩は,従来あまりかえりみられなかった疾患の問題点を掘り起こし,多くの古い疾患を,ある意味で新しい疾患としてクローズアップさせつつある。
これらの疾患の1つである非免疫性胎児水腫(nonimmune or nonimmunologic hydrops fetalis)は,1943年にPotter1)により第1例が報告された古い疾患であるにもかかわらず,最近再び注目を集めだしたゆえんが,胎児観察が容易となり胎内で本症が診断され,原因や病態の解明へのアプローチが可能となったことにほかならない。
そこで本稿では,systematicな検討が要求されている本症をとり巻く諸種の問題点を提起し,本症の原因,病態,治療,予防へのアプローチの糸口としたい。