主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:多胎をめぐる諸問題
回次: 11
開催地: 埼玉県
開催日: 1993/01/23
p. 87-96
はじめに
妊娠中の双胎間輸血症候群(TTTS)は待機的治療の予後が不良のため1~3),1児の除去やレーザーによる胎盤凝固療法などの胎内治療4~12)が試みられているが,妊娠中のTTTSについての明確な診断基準がないのが現状である。
TTTSは現在も1965年Rausenら13)の述べた,血管吻合の認められる一絨毛膜双胎で出生後のHb差が5g/dl以上の双胎という定義が守られている。Rausenらの定義以降,Tanら14)は体重20%以上の大小不同の児はTTTSが多いと報告した。その後,WittmanおよびBrennanら15~17)が超音波断層法上のTTTSの所見,2児の大小不同,大小不同の羊膜腔,大小不同の臍帯,エコー輝度の異なる胎盤,1児の胎児水腫18)および心不全の兆候という一つの明確な基準を示した(Brennan, 1982)19)。
しかし,今井20)およびDanskinら21)は体重差のある児とHb差は必ずしも関係のないこと,また,Fiskら22)は超音波断層法上TTTSの疑われた症例でも,胎児採血の所見では診断基準を満たさないことを述べ,近年ではTTTSの新しい診断基準作りが求められている21)。
そこで双胎149例の予後および胎児付属物の検討23~25),妊娠中の超音波断層法およびパルスドプラ法による血流計測の結果から,胎児治療の適応となるTTTSの出生前診断の基準作りを試みた。