周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第19回
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シンポジウム午後の部
シンポジウムのまとめ
田村 正徳池ノ上 克
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p. 122

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抄録

 このシンポジウムでは,予後不良因子を有する疾患として重症先天性心疾患と水頭症とMD双胎一児子宮内死亡を取り上げ,主として医療的側面に紋って対応策を検討していただくことになった。周産期医療技術の発達とシステム化の晋及により,これらの疾患が出生前に診断される機会は急速に増えつつあるが,残念ながらそれが胎児・新生児の救命率と神経学的予後の飛躍的な向上に直結しているとはいえないのが現状である。今回はこれらの疾患の臨床経険が豊富な5人の先生方に,各疾患ごとに1)出生前診断の現状と問題点,2)生命的および神経学的予後不良因子,を分析していただいたうえで,3)生命的および神経学的予後を改善するための周産期的管理の具体的方策の提言をお廊いした。

 渡辺先生と稲村先生のご報告からは,先天性心疾患では,出生前診断された症例は予後不良の傾向が認められたが,これは主として染色体異常などの合併症によるものであり,決して先天性心疾患そのものの予後が不良なのではない。新生時期の先天性心疾患の手術成績は着実に向上していることから,むしろ10%前後と低い出生前診断率を改善すれば先天性心疾患の生命予後は向上する可能性があることが示唆された。水頭症についてはもう少し複雑で,下川先生によれば,脊髄髄膜瘤・Dandy-Walker症候群・水無脳症・全前脳胞症などを除いた単純な水頭症でも予後には発症時期・合併奇形・未熟性・シャント術合併症が複雑に関与している。MD双胎一児子宮内死亡に関しては,末原先生の豊富な症例の分析から,双胎血栓栓塞症候群の防止には一児死亡後3日以内の娩出が効果的であることが示されたが,山中先生の報告にもある通り,急性TTTSや慢性TTTSや未熟性による障害の防止には有効とはいえず,胎児のVV吻合の有無や臍帯因子の出生前診断法の確立などの技術的課題も残された。

 いずれの疾患も救命率と神経学的予後の向上のためには,産科と小児科が連携した症例分析の蓄積と,出生前診断に対応した未熟児医療のよりいっそうの発展が不可欠であることが読者にご理解いただけることと思われる。

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© 2001 日本周産期・新生児医学会
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