主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:母体・胎児・新生児の心肺機能低下時の反応と対応
回次: 24
開催地: 埼玉県
開催日: 2006/01/20 - 2006/01/21
p. 19-25
はじめに
活性酸素,フリーラジカルは,正常な状態では産生されても,生体内の抗酸化能により消去される。しかし,その産生が生体の抗酸化能を上回る場合,脂質の過酸化,機能蛋白の不活化,DNA損傷による細胞障害,いわゆる酸化ストレスが引き起こされる1)。酸素は,生命現象を営むうえで絶対必要不可欠なものであるが,過剰な酸素は,oxygen free radicalを発生し,酸化ストレスの原因となる。
新生児は,子宮内の低酸素環境から出生後の高濃度酸素環境への変化と,蘇生時の酸素曝露のために,出生直後より酸化ストレスの影響を受けやすい状態となっている2~4)。また,新生児の抗酸化能は,未成熟であるため,その影響をさらに受けやすい状態となっている5~7)。
尿中8-hydroxy-2-deoxyguanosine(以下尿中8OHdG)は,活性酸素,フリーラジカルによるDNAの損傷で生じる酸化ストレスマーカーの一つである。DNA構成塩基の一つであるグアニンが,活性酸素,フリーラジカルによりC8の水酸化反応が引き起こされ,8OH-guanineに変化する。次に細胞内DNA修復酵素により切断,排出され,代謝,吸収されることなく尿中8OHdGとして排泄される。
今回我々は,新生児における酸素曝露の影響について,酸化ストレスマーカーである尿中8OHdGを用いて,①出生前後における酸化ストレスの変化,②出生後の吸入酸素濃度と酸化ストレスの影響,③重症呼吸循環不全のためECMOを行った症例における酸化ストレスの影響について検討した。