周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第26回
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シンポジウム午後の部:新生児
早産SGA児の栄養管理はAGA児と同じでよいのか?
三浦 文宏板橋 家頭夫水野 克己櫻井 基一郎北澤 重孝梅田 陽
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p. 61-66

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抄録

 はじめに

 早産低出生体重児がNICU退院時において在胎週数別出生時体格基準値の10パーセンタイルを下回っている状態はextrauterine growth restriction(以下EUGR)と呼ばれる1)。EUGRはその後の成長のみならず,発達予後にも影響することが知られている2)。そのため,欧米ではEUGRを予防する目的で出生後より直ちに胎児栄養必要量を与え,胎児発育および胎児と同様の体構成をめざすaggressive nutritionが行われるようになってきており,短期的な成長や発達面における効果についても報告されている3)。また,Brakerら4)の報告に端を発して多くの疫学研究が行われ,子宮内発育不全のある正期産児(ほとんどがSGA児)ではメタボリックシンドロームをはじめとする成人期慢性疾患のリスクが高いことが広く認識されるようになった。さらに最近では,胎児期のみならず出生後の低栄養環境によるプログラミングが,その後の環境とのミスマッチによって成人期の健康に影響するというdevelopmental origins of health and disease(DOHaD)仮説5)が浸透しつつあり,これによって成人期の健康との兼ね合いからも早産児の栄養管理をいかに行うべきかという議論も生まれている。

 しかしながら,これまで内外において早産低出生体重児の栄養管理をAGA児,SGA児の区別なく行うことの妥当性についてはほとんど議論されたことはない。特にaggressive nutritionが広まりをみせているなか,安全性の観点および成人期の健康の面からもこの議論は重要であると思われる。

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© 2008 日本周産期・新生児医学会
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