主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:早産重症胎児発育不全 Severe preterm IUGR(IUGR)
回次: 27
開催地: 福島県
開催日: 2009/01/16 - 2009/01/17
p. 37-42
はじめに
胎児発育不全(fetal growth restriction;FGR(IUGR))の原因は多岐にわたるが,妊娠中期発症の重症妊娠高血圧症候群により発症するFGR(IUGR)は,児の早期娩出を余儀なくされることや,精神発達遅滞,認知障害など神経学的後障害1~3)の見地からも重要な病態の1つである。
重度FGR(IUGR)児の神経学的後障害の発症機序はいまだ解明されていないが,その理由の1つとしてヒトにおける研究は倫理的側面から疫学調査を中心とした臨床研究にならざるを得ないことがあげられる。神経学的後障害の病態解明にはモデル動物を利用した基礎的検討が不可欠であり,現在までにもいくつかのFGR(IUGR)モデル動物の報告がある。子宮動脈結紮にてFGR(IUGR)を誘導するモデル4)や喫煙5)・低栄養6)などの母獣への負荷を与えてFGR(IUGR)を誘導するものもあるが,いずれもヒトにおける妊娠中期発症重症妊娠高血圧症候群が原因のFGR(IUGR)の病態と合致していない。我々は,妊娠高血圧症候群の原因の1つとして,プロスタサイクリンとトロンボキサンとの不均衡があげられること7~9)にヒントを得て,合成トロンボキサンA2(synthetic thromboxane A2;STA2)を持続投与する方法でFGR(IUGR)モデルラットを作成した10)。FGR(IUGR)モデルラットの身体発育様式および運動学習能力の評価を行い,ヒトにおける重度FGR(IUGR)児との臨床像を比較した後,中枢神経障害の機序解明のために,中枢神経の組織学的検討11,12),分子生物学的検討を行った13)。