主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:母児の予後からみた娩出のタイミングと方法
回次: 34
開催地: 兵庫県
開催日: 2016/02/05 - 2016/02/06
p. 41-44
背景
胎児先天性心疾患(congenital heart disease: CHD)の出生前診断率は向上してきており,卵円孔の狭小化を伴う左心低形成症候群や完全大血管転位症などの一部の疾患群では,出生前診断が予後の改善に寄与している1)。一方で,出生前診断により,計画分娩や帝王切開術(caesarean section: CS)が増え,分娩週数が早くなり,出生体重が小さくなることにより,予後を改善しなかったという報告もある2)。
当センターにおける胎児CHDの分娩管理は,経腟分娩を基本に,自然陣痛発来を待機する方針としており,分娩様式による予後に差がないことを報告してきた。分娩のタイミングについては胎内での心機能の変化や出生後の治療を考慮することにより,予後の改善が見込まれる可能性があるが,現時点では明確な指針はない。また,胎児CHDでは分娩時に胎児心拍数モニタリング異常が起こりやすいが,その予測因子はいまだ十分には解明されていない3)。
分娩のタイミングを考える上で,胎児の全身状態および心不全の重症度を判定する方法が必要となる。近年,Huhtaらによってcardiovascular profile(CVP)scoreが提唱された4)。CVP scoreは,腔水症,心拡大,心機能(房室弁逆流),静脈系血流波形異常,臍帯動脈血流波形異常の5項目(10点満点)からなる比較的簡便な胎児心不全の評価法で,スコアが低いほど重症度が高くなる(図1)。本スコアの最大の特徴としては,半定量的な評価が可能であること,心機能障害だけでなくそれに随伴する全身所見より総合的に評価していることが挙げられ,種々の病態に応用可能である5, 6)。