主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:母体・胎児・新生児の立場から常位胎盤早期剥離を考える〜母児の予後改善のために〜
回次: 36
開催地: 長野県
開催日: 2018/01/19 - 2018/01/20
p. 79-83
背景
常位胎盤早期剥離(以下,早剥)による母体死亡は近年減少したものの,児に対しては新生児仮死や子宮内胎児死亡(intrauterine fetal death;IUFD)を引き起こすことがあり,児の予後に大きな影響を及ぼす。当院は本研究期間内では埼玉県唯一の総合周産期母子医療センターであり,県内全域から母体搬送を受け入れている。そのため搬送に時間を要する可能性があり,早剥発症後,かかりつけ医を受診し,早剥と診断された後に当院へ搬送されるも,当院到着時すでにIUFDとなっていたり,胎児生存例で直ちに娩出するも神経学的予後不良となったりする例をしばしば経験する。本疾患における母児のアウトカムを改善するためには,搬送システムや麻酔・周術期管理に改善の余地があると考え,われわれは以下のようなシステムを提案したい。
① 早剥を疑う症状が出現した場合,搬送を要する施設を経由せず,周産期センターを直接受診する。
② 周産期センターが近くにない場合は,受診施設で脊髄くも膜下麻酔(以下,脊麻)により帝王切開を施行し,必要ならば産褥搬送・新生児搬送とする。
上記②について,受診施設の多くは麻酔科医が常駐していないことが想定されるため,帝王切開を全身麻酔(以下,全麻)で行うのは困難と考え,脊麻を施行することの可否を検討する必要があると考えた。そこで,上記システムの妥当性を評価するために本研究を行った。