周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
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第4回
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シンポジウム I:羊水に関する基礎と臨床
羊水と肺胞液――特に羊胎仔へのnoradrenaline投与による肺胞液の流出量に及ぼす影響について――
樋口 誠一
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p. 29-33

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抄録

 I はじめに

 胎生期の気管支,細気管支そして肺胞はいわゆる肺胞液によって満たされており,これは長い間,吸引された羊水であると信じられてきた。しかし,最近ではこの肺胞液は肺で生成された液体であることが確認されている1)。そしてこの肺胞液は胎児肺の毛細血管から肺胞上皮を経て,肺胞腔へ分泌されたものであり,在胎週数とともに漸増し2),胎児の咽頭を経て,羊水中にその一部が移行するものと考えられている3)

 最近,この肺胞液の分泌はbeta-adrenagic receptorの刺激により,肺胞上皮細胞のレベルで抑制されることが報告されている4)。生理的にはこの肺胞液が分娩時および生後の肺呼吸の開始とともに肺胞腔から消失していくことが証明されており,また臨床的には慢性の胎児仮死を伴うIUGRなどにおいて羊水量の減少があることが知られている。

 さらには,分娩中のストレス5)や胎児の低酸素血症の状態において6),交感神経系の刺激により,catecholamineが上昇することが報告されている。それゆえ,本題においてはcatecholamineのうちでもadrenalineのもつbeta-receptor agonistとしての肺胞液生成抑制効果とは別にalpha-receptor agonistとしてのnoradrenalineの投与が妊娠羊を用いたchronic preparationにおいて,羊胎仔の肺胞液の産生にいかなる影響を及ぼすかを検討すると同時に肺胞液と羊水との関係についても論じてみたい。

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© 1986 日本周産期・新生児医学会
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