周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第4回
会議情報

シンポジウム II:妊娠中期における前期破水の管理
PROMの成因に関する生化学的アプローチ
寺尾 俊彦金山 尚裕
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 76-84

詳細
抄録

 I はじめに

 臨床的に問題の多いpreterm PROMの成因に関しては従来から多くの報告があるが,明確に立証したものはない。それらの多くは,腟頸管からの上行性感染によりchorioamnionitisが発生し,卵膜が脆弱化しPROMが起こるという説である。つまり感染炎症説である。

 そこで腟頸管の炎症がPROMと何らかの因果関係があるか検討した。腟頸管の炎症の指標として腟部びらんの面積を採用した。なぜなら,腟部びらんが存在することは,そこに慢性炎症が存在することが多いからである1)

 そこで妊娠20~30週にコルボスコープにて子宮腟部を撮影し,デジタイザーで面積を計算し,その面積とPROM発生率との関係のprospective studyを行った。結果は図1に示す如くである。ここでいうPROMは,全例termにおいて発生したものである。明らかにびらんの面積とPROM発生に深い因果関係がありそうである。PROMの感染炎症説を十分示唆するものであろう。しかし腟部びらんが存在しない例でもPROMは発生している。これはどのように説明したらよいのであろうか。

 そこで我々は,PROM例において破綻部位周辺の卵膜の組織学的検索を行った(図2)。chorioamnionitisが存在するのも確かに認めるが,一方chorioamnionitisがない卵膜が存在するのも事実である。我々はchorioamnionitisなどのようなメカニズムで卵膜の脆弱化を起こすのか,またchorioamnionitisのない卵膜の脆弱化の原因は何かという疑問に当った。この疑問の解決策としてPROMの卵膜にはそれ自体何らかの変化があるのではないかと考え,生化学的に卵膜を分析してみることにした。また卵膜の主たる抗張力は羊膜にあるので以下羊膜を分析した。

著者関連情報
© 1986 日本周産期・新生児医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top