周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第42回
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シンポジウム午後の部:妊娠中の栄養と代謝を考える
Fetal Origins of Obesity:超音波を用いた胎児脂肪量の評価とその規定因子の解明
池ノ上 学
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p. 101-103

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抄録

 背景

 出生体重は児の周産期予後だけでなく,長期予後とも関連する(Developmental Origins of Health and Disease)1,2)。近年,母体の低栄養が胎児に影響を与える「Thrifty hypothesis」に加え,母体過栄養による胎児プログラミング,つまり過剰な栄養素の供給による児の脂肪酸酸化や糖新生の抑制,脂肪の蓄積が,小児肥満や早期発症メタボリックシンドロームにつながるとする「Fuel overload hypothesis」が提唱されている3)

 脂肪は身体組成の重要な構成要素の一つである。特に,ヒト新生児は他の哺乳類と比較して体脂肪率が高く,出生体重の個人差の46%は脂肪量の差によるとされる4)。これはヒトの進化の過程において,脂肪が,出生後の体温保持や飢餓環境に備えたエネルギー源確保のため,また他の哺乳類と比較し大きな脳実質のエネルギー源として利用するために重要であったことと関連している5)。胎児期における脂肪蓄積は妊娠16週頃から始まるが,妊娠30週前後を境に急速に増加し,その8割以上が妊娠後期に蓄積する6)。そして新生児体脂肪率は,小児期の体脂肪率と有意に相関するため,新生児体脂肪率は小児肥満の有用な予測因子となりうる7)。新生児期における体脂肪率の測定には,Dual Energy X-ray Absorptiometry(DXA)や空気置換プレシスモグラフィーなどがゴールデンスタンダードとして用いられ,すでにその計測法は確立されているが8),これまでヒト胎児期における脂肪量を計測した報告は少ない。

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© 2024 日本周産期・新生児医学会
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