周産期学シンポジウム抄録集
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第42回
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シンポジウム午前の部:新生児の栄養と代謝を考える
早産児における多価不飽和脂肪酸栄養とその代謝産物の関係
菅沼 広樹
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p. 55-60

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抄録

 背景

 多価不飽和脂肪酸(PUFA)は,新生児にとって重要な栄養素の一つである。早産児や正期産児では,PUFAを脂肪乳剤,母乳または人工乳から摂取する。早産児に投与されるこの脂肪乳剤として日本国内では大豆油由来の脂肪乳剤が使用されている。そのため主なPUFAはリノール酸となっている。一方,海外ではSMOFlipidやClinOleicなどの魚油やオリーブ油を含んだ脂肪乳剤が使用されている(表1)。このため早産児が生後早期に摂取するPUFAの組成は国による違いがある。

 近年,PUFAから産生される脂肪酸代謝産物(オキシリピン)の生理活性作用が注目され,網羅的な解析が可能となった。これらのPUFAにはアラキドン酸に代表されるようなn-6PUFAやエイコサペンタエン酸(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)のようなn-3PUFAを含んでいる。n-6PUFAから産生されるオキシリピンは主に急性炎症や慢性炎症を惹起するような作用を有しており,特にリノール酸から産生されるOXLAMs(Oxidized Linoleic Acid metabolites)は強力な炎症惹起作用を有すると報告されている1)。一方,n-3PUFAから産生されるオキシリピンは炎症を収束させるような作用を有している(図1)。

 成人では,摂取するPUFAが体内のオキシリピンに影響を与えると報告されているが2),早産児における変化は不明である。我々は,脂肪乳剤による経静脈的なPUFA摂取と経腸栄養の種類が早産児の血中オキシリピンに与える影響の2項目について検討した。

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