周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第42回
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シンポジウム午前の部:新生児の栄養と代謝を考える
超低出生体重児の修正満期における血中脂肪酸分析
満期産児の臍帯血との比較
金井 雄
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p. 49-54

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抄録

 背景

 1985年にアメリカ小児科学会より早産児に対する栄養学的目標として「胎児に類似した成長と体組成を維持できるように栄養を与える」というEarly aggressive nutritionの概念が提唱され1),国内でも早産児に対して生後早期より積極的な栄養管理が行われている。2019年にヨーロッパの小児の栄養関連の学会より出された小児における静脈栄養のガイドラインにおいても極低出生体重児は胎内と同様の体重増加を得るためのエネルギー摂取が推奨されている2)。一方で早産児に対する脂質の投与法についてはいくつかのリコメンデーションはあるものの胎内環境と比較してどのように摂取するかということについては言及されていなかった3)

 胎児の脳は発生の過程でアラキドン酸(arachidonic acid:AA),ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid:DHA)を特に必要とするとされており,3rd trimesterにその多くが蓄積される4)。また,マウス実験において胎児期からのAA,DHAの摂取制限によって,行動異常が出現することが証明された5)。このことからも胎児期の中枢神経の発達に脂肪酸は重要であり,摂取される種類についても考慮すべきである。

 脂肪酸は炭素の二重結合の数や部位により分類され,多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid:PUFA)はヒトの体内ではゼロから合成できず,体外から摂取しなければならない。胎児は経胎盤的に母体の血中から脂肪酸が移行する6)。AAやDHAはPUFAに該当し,体外からの摂取を必要とするが,早産児に投与できる栄養(母乳,人工乳,経静脈的な脂肪製剤)に含まれる脂肪酸は成人の血液,すなわち経胎盤的に供給される脂肪酸と比較するとAAやDHAの割合が低い(表1)。このことから本来脂肪酸を十分に蓄えるべき時期よりも早期に出生する超低出生体重児は,胎内環境とは大きく異なる脂肪酸が供給されていると推測される。

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