主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム
回次: 8
開催地: 大阪府
開催日: 1990/01/20
p. 145-151
多くの小児外科的疾患の治療成績が著しく向上した今日においても,生後早期に手術が行われる横隔膜ヘルニアの救命率は低い1~3)。近年の産科領域における超音波診断の普及により,本症の多くが出生前に診断可能となったが4~6),出生前診断が行われ,理想的な条件下での出産―手術が施行された94例の集計でも80%が死亡し,そのうち51%が術中術後死亡であったと報告されている5)。
本症治療上の重要なポイントは本症の病態の中心をなす肺の低形成と胎児循環の再開への対策である。なかでも肺低形成の原因は,胸腔内へ侵入した腹腔臓器による圧迫と考えられており,これをいかに早期に取り除くことができるかということが予後を左右する大きな因子とされている。近年の胎児治療の進歩とともに,これら肺低形成に対して,胎内での修復が注目されているが,その方法として,ヘルニアの修復,あるいは腹壁破裂の形成によって胸腔内圧を滅圧させることがあげられる7~15)。本当にそれで肺の成熟を回復できるのであろうか? われわれは横隔膜ヘルニアと臍帯ヘルニアを合併していた症例を3例経験しており,本稿では横隔膜ヘルニアの自験例の病態および治療成績を述べるとともに,臍帯ヘルニアを併発した横隔膜ヘルニアの3例について肺の発育がどのような影響を受けたかを検討した。