日本周産期学会は,時代の最先端を行く学問領域から1~2題を選択して,演者を公募し,シンポジウムならびにその関連演題の形で,深く,鋭く討議して来た。したがって日本周産期学会はディスカッションの新鮮味が売りものであり,今日多くの会員の自負心を育てるに至っている。
なお,日本周産期学会は世界最初の試みとして1991年11月5~8日に第1回International congress of perinatal medicineを東京において開催するため目下準備中である。会長には本会発足の生みの親であり,本会の顧問,かつ日本母性保護医協会会長である坂元正一先生をお願いした。
さて,第8回日本周産期学会は1990年1月20日大阪国際交流センターで開催されたが,そのメインテーマは,
ATL
先天性横隔膜ヘルニア
の2題であった。
ATLは高月清熊本大学教授が発見し,その発症原因ウイルスを日沼頼夫京大名誉教授が解明し,私が母乳感染説を提唱した疾患である。地球上何故か日本に特段に多発する極めて予後不良の国民病である。治療法が見出されていない現状では,母乳を中止してウイルス感染を防御する以外に有効な手立てがない疾患でもある。しかし,母乳を遮断することについては産婦人科医,小児科医,相互の考え方に依然隔壁があり,これらを整理する時期である。
一方,先天性横隔膜ヘルニアについては,積極的手術論と待機的手術論の対立意見がある。また本症に伴う肺低形成が原因なのか結果なのか,病理論の論争も多大の興味がある。予後不良の本症も胎児診断技術の進歩にょって出生前に診断され,早期より管理プログラムが始動し得るようになった。
以上の周産期学会の,今日的重要性をもつ2テーマの討議内容が,多彩な論旨と豊富な図・表の構成で,本書に掲載される次第であるが,御愛読を賜れば誠に幸である。
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