主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:自己免疫疾患合併妊娠
回次: 9
開催地: 東京都
開催日: 1991/01/20
p. 129-137
緒言
特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura :ITP)は自己免疫性血液疾患の1つで,骨髄での血小板の産生障害がなく,末梢での血小板破壊の亢進が血小板減少の原因と考えられるものをいう。
その機序は,ある血小板膜抗原に特異的に結合した抗体(IgG)がそのFc部分で網内系(マクロファージのFc receptor)に取り込まれることによリ,血小板減少が引き起こされると考えられている1)。
ITPには急性型と慢性型とがある。急性型は小児に多く,自然治癒することが多いが,慢性型は成人ことに女性に多く,自然治癒することは少ない。慢性型のITPは若年婦人に好発するため,妊娠との合併が多く,産科医が最も遭遇しやすい血液疾患である。したがって妊娠・分娩管埋が問題となるが,母体の抗血小板抗休が胎盤を通過して,胎児・新生児に一過性の血小板減少を起こすことがある(passive immune thrombocytopenia:PIT)ので,胎児・新生児管理にも十分な注意が必要である。
ITP合併妊娠の管理については,従来よりさまざまな提案がなされてきたが,われわれは今までに取り扱ってきた多くの症例の経験および文献的考察より,ITP合併妊婦における妊娠・分娩管理について適切な指針を述べることにする。