主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:自己免疫疾患合併妊娠
回次: 9
開催地: 東京都
開催日: 1991/01/20
p. 123-128
はじめに
近年の母児管理の進歩は,さまざまな合併症を有する妊婦の安全な妊娠出産を可能にしてきている。なかでも特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は比較的若年女性に高頻度にみられる自己免疫疾患であるため,妊娠に合併することはまれではない。したがって,われわれ産科医がITP合併妊娠に遭遇する機会は少なくない。
ITPは免疫的な機序により血小板の破壊が亢進する疾患であリ,このメカニズムに関与する因子は胎盤を通過して胎児にまで影響を及ぼし,ITPを有する母親から出生した児の33%~52%に血小板減少が認められるとされている1)。したがって,ITPを有する婦人が妊娠した場合には母体のみならず胎児の血小板数にも注意を払う必要が生じてくる。
ITPの診断のみならず,その病勢を反映する指標として血液中の血小板表面IgG(platelet associated-IgG:PA-lgG)の有用性が知られているが2),このPA-IgGが妊婦だけではなく胎児の血小板数を反映しているかどうかについては明らかにされていない。われわれはITP合併妊婦および正常妊婦を対象に,母体血ならびに臍帯血を採取し,血小板数を調べ,血小板数とPA-lgG値との関係について検討を行った。