周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第9回
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シンポジウム A:自己免疫疾患合併妊娠の基礎
抗リン脂質抗体と妊娠
青木 耕治林 弥生八神 喜昭
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p. 29-36

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抄録

 緒言

 1952年にSLE患者血漿中で初めて証明されたループスアンチコアグラント(LAC)とは,リン脂質依存性の内因系凝固時間を延長させる後天性循環抗凝血素のことであり,その後の研究で細胞膜リン脂質(抗原)に対する自己抗体であることが明らかにされてきた1)。またLACを有するSLE患者は,その病像とは無関係に血栓症や反復流産・死産を起こしやすいことが明らかにされるに至って2),LACの本態としての抗リン脂質抗体が臨床的に非常に意義深い自己抗体として注目されてきた。さらに産科医として注目すべき点は,自己免疫疾患のない健常婦人にも抗リン脂質抗体の存在が証明され,これらの症例の多くに反復流産・死産の既往が認められている点である3)。最近では抗リン脂質抗体と子宮内発育遅延4)および妊娠中毒症5)との密接な関係も示唆されており,抗リン脂質抗体と異常妊娠とのかかわりが重要な研究テーマとなってきた。

 今回,異常妊娠の中でも反復流産について抗リン脂質抗体との関係を検討する目的で,1983年から1989年にかけて当院を受診した反復流産患者334例における,血清中の抗リン脂質抗体のELISA法による検索を行った。さらにその中で抗リン脂質抗体陽性反復流産患者のその後の妊娠の予後について,プレドニゾロン・アスピリン療法の未施行例と施行例につき,抗リン脂質抗体価の推移とともに検討を加えたので報告する。

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© 1991 日本周産期・新生児医学会
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