周産期学シンポジウム抄録集
Online ISSN : 2759-033X
Print ISSN : 1342-0526
第9回
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シンポジウム B:自己免疫疾患合併妊娠における母児管理
自己免疫疾患合併妊娠の母児管理
――SLE合併妊娠の児の予後規定因子――
吉田 幸洋中村 靖橋本 武次高田 道夫
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p. 87-95

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抄録

 はじめに

 全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は20-30歳代の女性に好発し,慢性に経過する疾患であるため,患者にとって結婚・妊娠・出産は重要な問題である。

 これまで妊娠・出産はSLEの増悪因子の1つであり,避けることが望ましいと考えられていた。しかし,近年SLEの病態の解明は進み,診断・治療法の進歩によってSLEの疾患自体の予後は改善され,長期寛解例や軽症例が増えてきた。これに伴って,SLE患者の中には妊娠・出産を希望するものも増え,またSLEを管理する内科医も一定の基準を設けこれを容認する傾向にある1)。しかし,SLE合併妊娠は母児双方にとって極めてハイリスクであり妊娠中は厳重な管理が必要である。

 SLEと妊娠との関係について論ずる場合,妊娠・分娩がSLEの疾患自体に及ぼす影響と,SLEという免疫異常を基盤とする疾患が妊娠・分娩に及ぼす影響との2つの視点から考える必要がある。前者は妊娠・分娩とSLEの発症との関係,さらに妊娠中あるいは分娩後におけるSLEの軽快・増悪といった主として母体側の問題である。一方,後者は流・死産や早産,子宮内胎児発育遅延(IUGR),SFD児や低出生体重児,新生児ループスの発症といった主として胎児・新生児側の問題点としてとらえることができる。

 今回はSLE合併妊娠における胎児・新生児側の予後という点に焦点を絞り,その結果を分析することによって,児の予後に及ぼす母体側の因子を抽出し,産科の側からみたSLE合併妊娠の母児管埋上の要点についてまとめてみた。

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© 1991 日本周産期・新生児医学会
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