抄録
膝靱帯損傷は,膝関節に対して過大な外力あるいは内力が作用した結果,関節の不安定性を生じる外傷である.そのため,損傷後の理学療法は観血的あるいは保存療法にかかわらず,関節の安定性の確保や靱帯へのストレス回避に十分に留意する必要がある.理学療法の目的は,受傷によりいったん低下した膝関節周囲の軟部組織の柔軟性·筋力·姿勢制御能力を最大限に獲得することである.装具療法は身体の外部から関節の安定性や靱帯へのストレスの回避を可能にする利点がある一方で,関節の固定による可動域制限や筋萎縮の惹起,そしてパフォーマンスの低下などの欠点を克服する必要がある.