日本毒性学会学術年会
第41回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-4
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優秀研究発表 ポスター
メチル水銀により誘導されるラットアストロサイトの神経栄養因子放出とその神経保護作用
*竹本 拓矢石原 康宏石田 敦彦山崎 岳
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抄録
 メチル水銀 (MeHg) は水俣病の原因物質であり、これまでニューロンに対する毒性が広く調べられてきた。しかし、脳内にはニューロンの10倍以上のグリア細胞が存在し、中でも、グリア細胞の大多数を占めるアストロサイトは、生存因子の放出やイオン環境の維持などによりニューロンの生存に関与している。さらに、神経障害時における活性化も報告されており、MeHgの脳への影響を理解するには、アストロサイトへの作用も併せて調べる必要がある。本研究では、ニューロン-アストロサイト相互作用に着目して、アストロサイトに対するMeHgの影響を検討した。
 ラット初代ニューロンおよび初代アストロサイトをMeHgで処置すると、いずれも濃度依存的に細胞死が引き起こされたが、アストロサイトはニューロンよりもMeHgに対して耐性を示した。加えて、海馬スライス中のニューロンは、単独培養のニューロンと比較して、MeHg耐性が増大した。また、MeHg処置により、アストロサイトの神経成長因子 (NGF) および脳由来神経栄養因子 (BDNF) の発現上昇、および培養上清中への放出が見られた。ヒト神経芽細胞腫SH-SY5YをNGFもしくはBDNFで処置しても、MeHgによる細胞死に影響しなかったが、MeHg処置したアストロサイトのコンディショナルメディウムは、MeHgが引き起こすSH-SY5Yの細胞死を抑制した。さらに、その細胞死抑制効果はNGF受容体TrkAのアンタゴニストであるGW-441756、BDNF受容体TrkBのアンタゴニストであるCyclotraxin-Bにより消失した。
 以上より、アストロサイトはMeHgに応答してNGFとBDNFを放出し、ニューロンを保護していると考えられる。加えて、NGFやBDNF単独では保護作用を示さなかったことから、保護作用におけるNGF、BDNF以外の因子の関与も示唆される。
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© 2014 日本毒性学会
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