抄録
著明な嚥下障害があり唾液誤嚥により頻回に誤嚥性肺炎を生じている重症心身障害児に対して,適切な前傾姿勢,ヘッドサポートによる頸部過伸展の抑制,カットアウトテーブルと胸パッドによる下顎位置の安定化を考慮して,座位保持装置付き車椅子を作製した.前傾位をとることで唾液の口腔外での処理を可能とし,頸部過伸展を抑制することで前頸部の過緊張を軽減し,下顎全体で頭部を支持することで気道の確保を得られやすくした.以上の工夫により喉頭挙上がしやすくなったこと,口腔内分泌物の気道内流入が軽減したこと,気道閉塞が改善したことで,誤嚥·喀痰吸引回数が減少し,移動時の患児ならびに家族の精神的·身体的負担軽減につながった.