筋力は,姿勢や動作の機能レベルを評価するために原因因子として重要なパラメータの1つである.近年,臨床で使用しやすい筋力計測機器が開発され,その精度が向上している.本稿では比較的安価な徒手筋力計(以下,HHD)に焦点を当て,その有用性と臨床応用について解説する.筋力計測において重要なことは,筋力が運動の源であり,筋力と姿勢·動作の特性との関係を見出そうとする概念である.HHDを用いる筋力計測では誤差が出やすく,これを減らす手順や条件設定と留意点がある.計測の留意点としては (1) 代償運動を抑制する,(2) 計測値を関節トルクに換算する,(3) 負荷抵抗の押込みは可能な限り等速にする,(4) 再現性の高い身体条件を設定する,の4点が挙げられる.