日本義肢装具学会誌
Online ISSN : 1884-0566
Print ISSN : 0910-4720
ISSN-L : 0910-4720
36 巻, 1 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
巻頭言
特集 義肢装具士にききたい! プラスチック短下肢装具の材料
  • 早川 康之
    2020 年 36 巻 1 号 p. 2-6
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    プラスチックは製造方法により様々な性質を持つ.装具に使用されているプラスチックも例外ではなく,同じ種類のプラスチックでも,様々な特徴を持った製品が使用されている.短下肢装具は,他の部位に適合する義肢装具と同様に,使用者の状態,使用目的や求められる機能などを考慮して,プラスチックの種類,厚み,成形方法を選択する必要がある.また今後,3Dプリンタや熱可塑性FRPの導入などにより,さらにいろいろな性質を持つプラスチック利用の可能性がある.本稿では,短下肢装具に用いられるプラスチックのうち,主に熱可塑性プラスチックについて,基礎的な知識,分類方法,性質の違い,成形方法や使用環境と留意点などについて概略をまとめた.

  • 中島 博光
    2020 年 36 巻 1 号 p. 7-9
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    ポリプロピレン(略号PP)は身近な材料であり,生活の様々な場面で多く使用されている.日本においてはポリエチレン·塩化ビニルと並び,非常に消費量が多くフィルム·シート·包装容器などの家庭用品から自動車部品といった工業製品にも用いられている.我々の業界では,押し出し成形によって製造されたPPのシート材をオーブンで軟化させ,陽性モデルに手技で沿わせて,プラスチック短下肢装具を古くから製作してきた.PPは熱可塑性でありヒンジ性にも優れているので,その特性を活かしてシューホーンブレース等を製作している.弊社のオルトップAFO®は射出成形(インジェクション成形)で製造しており,PPの特性を活かした技術である.

  • 狩野 綾子
    2020 年 36 巻 1 号 p. 10-11
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    コポリマーとは2種類のモノマー(単量体)の重合によって作られる高分子体(ポリマー)の総称である.その中で短下肢装具材料として用いられるのは,ポリプロピレンにポリエチレンを配合した熱可塑性プラスチックである.短下肢装具材料として十分な硬さと,加工性の良さ,溶着性の良さなどがその特徴である.

  • 奥谷 弦, 狩野 綾子
    2020 年 36 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    オルソレンは分子量100万以上の超高密度ポリエチレンであり,靭性が高く,溶融粘度がきわめて高い.そのため熱成形加工には高度の加工技術を要する.段階的な切削で可撓性を調整できる特性を生かし,症状に応じた尖足防止用の固定装具から歩行用のよりダイナミックな装具にまで使用することができる.サブオルソレンは分子量50万の高密度ポリエチレンである.熱成形加工が容易で加熱による収縮も少ないのが特徴で,厚みが一定で安定した製品を製作することができる.急性期の治療用短下肢装具や,曲げ応力の掛かりにくいコルセット,両側支柱付き装具のカフなどに用いられることが多い.

  • 服部 勝房
    2020 年 36 巻 1 号 p. 16-17
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    小児および幼児の扁平足は,踵骨の回内,距骨下関節の内転,舟状骨第一中足骨の縦アーチ低下による扁平となり前足部も外転位となる.これらの問題点を解決するために,靴のソールではなく足部全体を包む足底装具とする.装具が足に密着することでアキレス腱と後脛骨筋の動きに装具がずれることが無くなり,子ども本来の動きができるようになると膝反張が無くなり体重移動がスムースになる.これらの動きを可能にする装具素材はハイトレルが最適と思われる.

  • —素材や制作方法の特徴について—
    森 一大, 亀田 和弘, 平山 頼達, 藤倉 雅
    2020 年 36 巻 1 号 p. 18-20
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    KIレストーラ·KIサブは,義肢製作の現場で広く使用されているポリプロピレンと比べて,いくつか特徴を持った素材である.(1) ポリエチレンを原料としている,(2) 耐衝撃性·靱性が高く,温度変化による性能変化も少ない為非常に安定しており低温時でも割れにくい,(3) 成形性が大変良く,縮変形が少ない,(4) 独自の材料ブレンドにより仕上がりが綺麗,(5) 装具にした際,適度なたわみがあり装着感がとても良い,といったことが挙げられ,小児用短下肢装具や夜間装着用短下肢装具,体幹装具,肩義手ソケット,下肢装具カフ等幅広く用いられており装着感が良く,破損の心配が無い効果的な装具製作が可能な素材である.

  • 宮川 拓也, 松本 芳樹
    2020 年 36 巻 1 号 p. 21-23
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    原料価格が安く,加工しやすい素材であるポリエチレンは一般的に広く流通しているプラスチック材料であり,義肢装具に用いられるプラスチック材料としてもよく用いられる材料の1つである.このポリエチレンは,分子量によって低密度∼超高密度ポリエチレンと分類され,機械的特性も大きく異なっている.さらには,ポリエチレンに酢酸ビニルを共重合させその柔軟性を改良したトレラックも,特徴的な素材となっており良く利用されている.トレラックおよび,ポリエチレンの中でも軟質ポリエチレン·硬質ポリエチレンを中心に,その利用方法や成型加工における注意点などをまとめ,製作された装具を提示する.

  • 富山 弘基
    2020 年 36 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    近年,義肢装具材料として炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics : 以下,CFRPとし,先頭の文字が強化繊維の種類をあらわす.先頭の文字が無い場合は繊維強化プラスチックの総称を指す)を用いることが一般的になってきている.特に装具の製作費にカーボンを用いることによる加算が認められたことで,ポストポリオ等の筋力低下が顕著な症例において有用な素材として注目を浴びており,数年前に比べ,FRPに用いる繊維や樹脂の種類,製作方法の選択肢が明らかに増加している.しかし,FRPはプラスチック板や金属材料に比べ,製作方法や素材の組み合わせによって物理的特性が大きく変化するため,義肢装具材料として適用を検討したり,実際に製作するにあたっては専門的な知識を十分に保有している必要がある.本稿では,義肢装具材料としてFRPを用いる際の基本的な知識や注意事項について概説した後,臨床現場での使用を想定した適応や禁忌事項について紹介する.

  • 前田 雄, 須田 裕紀, 郷 貴博, 東江 由起夫
    2020 年 36 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    3D-Printerは,1970年代の後半から米国や日本で研究がなされ,すでに諸外国では試作品用途だけではなく,骨格構造義足のコスメチックカバーや治療用装具等の製作で活用されている.そして我が国でも3Dデジタル技術を活用している義肢装具製作施設が増えてきている.しかし,3D-Printerを使用するにあたっては,その強度面や材質面等で越えなければならない課題も多く,現時点では強度を要しない軽微な装具や自助具等に限られている.本稿では,これまで我々が取り組んでいる3D-Printer製短下肢装具の実用に向けた研究について紹介し,今後の展望について解説する.

  • 高嶋 孝倫, 中村 喜彦
    2020 年 36 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    短下肢装具は下腿支持部,足部,および両者を連結する継手(部)が主な構成要素,すなわち本体となり,ベルトや付属品が取り付けられて全体を構成する.これら付属品は装具がその機能を発揮するために必要不可欠である.短下肢装具を必要とする患足はベルトによって装具本体に固定されることで装具の効果を得ることができる.装具本体の剛性がいかに高くとも,あるいは継手部の制限や制動などの機能が高度であっても,ベルトによる固定が不良ではその効果は減少する.また,滑り止めの摩擦効果なしでは立位歩行の安全性は得られない.本稿では付属品のうち,ベルト(ユニット),内張り,滑り止めに焦点を当て,その機能と要件,材質と製作法について言及した.

原著
  • —模擬冬期路面での基礎的検討—
    泉谷 諭司, 昆 恵介, 三田村 保, 松﨑 博季, 早川 康之, 野坂 利也
    2020 年 36 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    冬期間の寒冷地域では雪によって路面条件が悪化し,歩行者の転倒事故を引き起こしている.一度の転倒でも思わぬ外傷につながるリスクがあるため,その予防は重要である.そこで本研究は,靴組込み式路面判別デバイスを開発し,冬期間の外出時に遭遇しうる路面(以下,模擬冬期路面)にて,判別指標の取得を試みた.被験者は健常成人を対象とし,装置着用時の歩行中において乾燥路面と模擬冬期路面での計測を実施した.計測項目は氷,水に光吸収な特定波長の光量と路面の温度とした.これらのデータを計測後,各路面間の傾向を観察し,取得データに対して統計解析を行った.結果,遊脚相において乾燥路面と模擬冬期路面間に異なる傾向を確認した.取得傾向を路面判別の指標とすることで,実際の冬期路面の判別に利用できる可能性が示唆された.

短報
  • 小林 伸江, 妹尾 勝利, 井上 桂子
    2020 年 36 巻 1 号 p. 48-50
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    岡山県の作業療法士,義肢装具士を対象に,手指·手部切断に対する早期義手装着法の実態調査を行った.その結果,義手装着前訓練の経験があったのは,作業療法士24名(全回答者数の8.9%)であった.訓練用仮義手の作製経験があったのは,作業療法士5名(1.9%),義肢装具士1名(20.0%),本義手作製に関わったのは,作業療法士7名(2.6%),義肢装具士5名(100%)であった.自由回答では,義手の役割について,外観の改善,手の機能改善,ADL改善の順に多かった.聞き取り調査からは,手指·手部切断に対する訓練用仮義手の有効性が示唆された.

  • —兵庫県立リハビリテーション中央病院15年の経験から—
    戸田 光紀, 陳 隆明, 柴田 八衣子, 溝部 二十四, 高見 響
    2020 年 36 巻 1 号 p. 51-53
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    先天性上肢欠損児において,筋電義手は両手動作の獲得を可能とし活動,参加の機会を広げる有効な手段である.しかし本邦において小児に対する筋電義手は普及していない.その要因として小児に対する筋電義手の訓練マニュアルが存在しないこと,および公的支給体制が整っていないことが挙げられる.兵庫県立リハビリテーション中央病院では2002年より小児に対し筋電義手訓練を常時提供できる体制を構築し,これまで15年間で70例以上の児に対して継続的に筋電義手訓練を提供してきた.今回,我々は訓練を経て特例補装具として筋電義手支給に至った児について調査を行ったので報告する.

症例報告
調査報告
  • 平山 史朗, 島袋 公史, 藤﨑 拡憲, 今村 健二, 高田 稔, 山﨑 裕子, 渡邉 英夫
    2020 年 36 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    今回,脳卒中発症後に初回に処方される短下肢装具(以下,AFO)について全国的にアンケート調査を実施した.全国の回復期リハ病棟を有する病院410病院に依頼し,回答が得られた109病院のデータを分析したところ,処方された割合が多かった順にシューホーンAFO, 両側金属支柱AFO, オルトップAFO, タマラック·ジレット継手AFO, ゲイトソリューションと続き,これらの上位5つの装具だけで全体の8割以上を占めていた.1病院で処方されるAFOの種類は平均で4.7種類であった.また,長下肢装具処方後,AFOにカットダウンした構成AFOの部分は両側金属支柱AFOが7割以上と大勢だった.今後は,有効回答率を増やす工夫を行いながら大規模に,組織的に,また定期的に全国調査することが望ましいと思われた.

講座 バリアフリー
  • 髙橋 儀平
    2020 年 36 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2020/01/01
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル フリー

    本稿は日本における1960年代後半のバリアフリーの発祥から今日までの展開を概観したものである.日本のバリアフリーの動きは1970年初頭に始まっているが,当初から欧米諸国からの学びが多く,同時にその経験をいち早く実行に移した,障害者自身の行動力によるところが大きい.一方,研究者らはそれらへの技術的情報提供を怠らなかったともいえる.その後80年代の福祉のまちづくりの取り組みを経て,90年代以降のバリアフリー関連法制度の時代が始まる.そして2020年の東京オリンピック·パラリンピックの開催決定を向け,多様な市民の共生を謳うインクルーシブな社会環境への創出に向かっている.ユニバーサルデザインはこれらをハード·ソフトの両面から具体化する技術的プロセスとして今や十分な市民権を有したといえる.バリアフリーの新たな展開に対応した重要なキーワードの1つである.

印象記
feedback
Top