脳卒中後片麻痺者に対する装具使用は,障害された歩行に対して運動学的な変化を起こすことにより,パフォーマンスを改善する.しかし,装具によって得られる運動学的な変化について十分に整理されているとはいえない.短下肢装具により歩行速度や麻痺側荷重量が改善し,麻痺側足圧中心軌跡の延長や歩行コストの改善が得られるが,一方,その運動学的変化は,遊脚期の下垂足と反張膝の改善以外,特に特徴的な股関節や遊脚期の膝関節の運動においては一定の変化が見られない.したがって,装具処方時の歩行観察は,異常な歩容の改善だけでなく,パフォーマンスに対する変化を含めて観察することが重要である.